「職員第一主義」をかかげ、職員の幸せを徹底追求!
~働く人の「幸福度」を高める介護テクノロジー活用~
社会福祉法人スマイリング・パークは、宮崎県都城市に拠点を置き、社会福祉事業や高齢者事業など78事業を展開しています。都城市は、ふるさと納税額で2年連続、5度目の1位を誇る地域として知られていますが、その地で地域に密着した福祉サービスを提供し続けるスマイリング・パークもまた、驚異的な成長を遂げています。今回は、同法人を率いる山田一久理事長に、理事長就任後の取り組みや急成長の要因、そして今後の展望について、じっくりとお話を伺いました。
― 急成長の要因について教えてください。
私たちが急成長を遂げた最大の要因は、何よりも「職員第一主義」を徹底したことにあります。職員が幸せでなければ、利用者に対して最高のサービスを提供することはできません。なぜならば、職員のモチベーションや充実感が、利用者へのサービスの質に直接影響を与えるからです。
理事長に就任した当初、職員が長く安心して働ける環境を整えることが急務だと感じました。これまでの福祉業界では、職員の負担が大きく、離職率も高いという課題がありました。そこで、私たちは定年制の見直しを行い、職員が68歳以降も顧問として活躍できる制度や、78歳まで昇給が可能な仕組みを導入しました。これにより、職員は将来に対する不安を感じることなく、安心して仕事に専念できるようになりました。
また、副業制度を設けることで、職員が福祉の分野以外でも自分のスキルを発揮できる場を提供しました。職員が多様なキャリアを追求できることで職員一人ひとりが自己実現を果たし、それが組織全体の活力となっています。さらに、職場の多様性を尊重するために、服装や髪形の自由も認めました。こうした改革により、職員のモチベーションは飛躍的に向上し、離職率は劇的に改善され、現在では3%台を維持しています。
― ICT の活用について教えてください。
「職員第一主義」を実現するためには、ICTの活用が不可欠です。スマイリング・パークでは、業務の効率化と職員の負担軽減を図るために、最新の技術を積極的に取り入れてきました。その中でも、介護ソフト「ケアカルテ」の導入は、業務の流れを根本から変えるほどの影響を与えました。
以前使用していた介護ソフトは、私たちが日本一使いこなしていると自負していましたが、それでも現場の職員は膨大な記録作業に時間を取られており 、残業が常態化し、職員たちは疲弊していました。そこでケアカルテを導入し、記録作業を大幅に削減することで、ペーパーレス化を実現しました。
― ケアカルテ導入のきっかけや決め手について教えて下さい。
もともとケアコネクトジャパンやケアカルテの名前は知らなかったのです。
YouTubeで介護システムに関する情報を検索していた時にケアコネクトジャパンの動画が目に留まりました。動画ではケアコネクトジャパンの齋藤社長が「記録をしないで記録を取れることが理想」だと話していました。当時は「記録は自分たちで取られなけばいけないもの」と思っていたので、齋藤社長の「職員に記録をさせない」という考えに驚愕し、すぐに「これだ!」と思い、導入を決定しました。
― ケアカルテを導入後、職員さまの反応はいかがでしたか?
AIを使った音声入力で記録を取れるアプリ「ハナスト」を初めて導入した時、現場の職員たちはその利便性に驚いていました。特に、長年手書きでの記録作業を行ってきたベテランの職員たちにとっては、大きな変革だったようです。彼らは、記録作業にかかる時間が大幅に短縮されたことで、利用者と向き合う時間が増え、その結果としてサービスの質が向上しました。
また、外国人スタッフもハナストの恩恵を受けています。日本語の発音やイントネーションに多少の違いがあっても、システムがしっかりと内容を理解し、正確に記録してくれるため、業務が滞ることはありません。
これにより、彼らも安心して業務に取り組むことができ、チーム全体の士気が向上しています。現場の職員たちが自分の仕事に誇りを持ち、生き生きと働く姿を見ることが私にとって何よりの喜びです。
― スマイリング・パーク様では介護日誌や申し送り業務も廃止されているんですよね?
そうなんです。これまでは、日誌の作成や職員が集まって申し送りを行うことは業務の一部として当然のものという固定観念がありました。以前のソフトでは、その日にどういった事があったのか振り返るのが難しかったため、日誌や申し送り簿は必要不可欠だったのです。
ケアカルテは施設独自の運用や帳票もシステムに組み込むことができる、いわゆる「カスタマイズ」を強みとしているシステムと導入前から伺っていたので、日誌や申し送り簿のカスタマイズについて相談しました。
しかし、ケアコネクトジャパンより「ケアカルテの記録一覧や申し送り一覧を見れば、わざわざ日誌や申し送り簿に転記しなくてもひと目で確認・情報共有が出来ますよ。この際、日誌や申し送り簿の運用は廃止しませんか?」と提案を受けたのです。
私たちとしては「監査上問題ないか」が懸念点のため、すぐに県の担当者に確認を取りました。そうしましたら「システムの記録の中で、状況がしっかり判るものがあるのであれば問題ありません。」という回答でした。
ケアカルテを起動したら、その日にどんなことが施設で起こっているのかひと目で分かります。
職員からの報告を聞いた私は、すぐに日誌や申し送り簿の作成を廃止することを決断しました。これにより日誌作成に時間を費やす必要がなくなり、職員はケア後にすぐに記録を行えるようになりました。この結果、記録の精度が向上し、職員間の情報共有が円滑になりました。また、現場には紙の記録が一切不要となり、ペーパーレス化が実現しました。これにより、職員は日誌作成のために残業することなく、定時で帰宅できるようになり、家族との時間を大切にすることができるようになりました。さらに、申し送りのために職員が集まる必要もなくなり、業務効率が大幅に向上しました。
― システム導入を検討している方へのアドバイスをお願いします。
システム導入を検討されている方には、まず現状のシステムや業務フローを見直し、何を改善すべきかを明確にすることをお勧めします。多くの場合、変革の際には「何か新しいことを始めないといけない」という考えにとらわれがちです。しかし、それよりも重要で、実際に取り組みやすいのは「古いものをやめる」という視点です。
「現状維持」ではなく、「何をやめるか」をしっかり考え、不要なものを整理することが、結果として成功への近道となります。私が2012年に理事長に就任してから、古い体制や考え方はどんどん変えてきました。法人名の変更から始まり、副業制度を認め、制服制度を廃止し、全スタッフに名刺を配布、日誌作成や申し送りなど、多くの「古いもの」を廃止してきました。
テクノロジーの導入も同様です。現場の介護スタッフの皆さんが、紙での記録や転記に苦しんでいませんか?
本来、スタッフが最も力を発揮できるケアの仕事が十分にできているでしょうか?
現状維持を続けることで、スタッフは次第に疲弊し、結果として離職率の上昇を招いてしまいます。だからこそ、テクノロジーを導入し、スタッフが得意とする仕事に集中できる環境を整えることが、彼ら自身の「幸せ」をもたらすのです。
今こそ、経営者の決断が求められています。
変化を恐れず、古いものを手放す勇気を持つことが、真の変革を実現するための重要なステップです。
― 今後の展望についてお聞かせください。
私は、質の高いケアと先進的な技術を融合させた日本の介護は世界でもトップクラスであると信じています。アジアの国々は日本を手本にしており、ヨーロッパでも日本の介護テクノロジーが注目されています。今後は、日本の技術力をさらに世界に発信し、グローバルなリーダーシップを発揮していきたいと考えています。
そのためには、国内外の企業や団体と連携し、常に新しい挑戦を続けることが必要です。スマイリング・パークとしても、業界の常識を打ち破るようなサービスや仕組みを導入し、日本の介護が世界に誇れるモデルケースとなるよう、さらなる努力を続けていきます。職員の働きやすさを追求しながら、利用者に最高のケアを提供することが私たちの使命です。これからも職員とともに成長し続け、社会に貢献できる法人であり続けたいと思います。
社会福祉法人スマイリング・パーク山田理事長のICT化&DX化推進の取組みがTVで特集されました!
9/23に放送されたのTV番組「企業家たちの挑戦ストーリー」(TOKYO MX:第2・4週 月曜日26:05~26:34放送に山田理事長がご出演され、介護業界に“革命”をもたらした様々な取り組みが紹介されました。番組内では、山田理事長がICT化およびDX推進の一環として介護記録ソフト「ケアカルテ」やAI音声入力アプリ「ハナスト」を導入した理由や効果についても、熱く語られています。こちらのYouTubeにアップされておりますのでご確認ください。
当記事の内容は、取材当時の情報です。
お話しを伺った方
宮崎県都城市生まれ。IT 企業で技術職や営業職を経験し、異業種での多様なキャリアを積む中で、福祉の道を志す。2002年特別養護老人ホームほほえみの園に入職。介護現場での実務経験を積み、2011年施設⾧に就任。その後、現職。「 職員の幸福度を高める」ことをテーマに、笑顔に包まれる職場づくりを目指して日々奮闘中。