福岡市にあるマナハウスは、透析治療を中心とする重松クリニックが母体となり、創設された特別養護老人ホームです。
●地域に根差した特養
●医療に強い特養
●誤嚥性肺炎になりにくい特養
という3つのブランディングで、「福岡で一番」の特養を目指しているそうです。
今回は、施設のある壱岐南校区でさまざまな地域貢献をおこなっている「特別養護老人ホーム マナハウス」の小金丸施設長に、「地域に根差した特養」 としての取り組みについて、ケアコネクトジャパン福岡支店のケアコネクター佐藤がインタビュアーとなりお話を伺いました。
「ふら~っとカフェ壱岐南」で “顔の見える関係”を築こう!
(ケアコネクター 佐藤)
ー 地域貢献の取り組みをたくさん行なっていると思いますが、一番初めにスタートした地域貢献は何ですか?
(小金丸施設長)
「ふら~っとカフェ壱岐南」という、地域カフェがスタートだったかな。
そもそも地域カフェをするためではなくて、地域の人たちともう少し”顔の見える関係”を築いていこう!ということでマナハウスを含めた3か所の介護施設で始めました。
ここの校区は高齢化率がすごく高くて「孤立死や孤独死をなくしたい」ということが一つの課題として見えてきました。力を合わせてみんなで一緒に何ができるかを話し合い、気軽に集えるような場所を作ってみようという試みがきっかけです。
カフェといっても、実際にはお年寄りや子どもたちが集まってとめどなくワイワイやっている感じです。たまに、公民館長が趣味で作ってきてくれたケーキを配ったり。子どもたちは店番を体験したり、計算してお釣りを渡したりすることも遊びの延長で楽しいみたいです。何かをするのが好きな人たちが集まってる感じですね。
(ケアコネクター 佐藤)
ー 地域カフェの運営はマナハウスさんが行っていますか?
(小金丸施設長)
マナハウスが運営しているわけではなく、実行委員会で運営をし、そのなかに参加をするという形をとっています。
実行委員会は月に1回集まっていて、地域住民や団体だけでなく、多数の企業などいろいろな人が参加してくれています。目的はそれぞれ違うかもしれないけれど、ベクトルは同じ。所属がまったく違う人達が集まって1つのカフェが成り立つ。それをツナいでいくのが社会福祉法人の役割じゃないかな。
(ケアコネクター 佐藤)
ー 各地でも法人さんが地域カフェ運営を行なっているという話を聞きますが、地域の方に足を運んでもらうことはすごく大変なことだと思います。地域の方に認知してもらうために何か心掛けたことはありましたか?
(小金丸施設長)
マナハウスや地域の方々がもともと持っている資源や得意分野を活かすことです。
マナハウスの資源は「開催場所や職員」、得意分野は「送迎」。
協力してくれているお店は、野菜や花を売ったりマッサージやメイクをしたり。
そして、地域の人たちは「広報」が得意。福岡市の全世帯に配布される広報誌の中に、カフェのちらしを折り込んでもらいました。
運営費は、毎月配るチラシに地域企業の広告を載せてもらってまかなっています。
いつ来てもいい、いつ帰ってもいい、ゆる~い感じが「ふら~っとカフェ」なんです。
「壱岐南てつだい隊」は、“ちょっとしたお困りごと”を解決します
(小金丸施設長)
でも…カフェって来られる人しか来られない。
実際には家から出られない人が圧倒的に多くて、高齢化が進むとお困りごともさまざまなんです。
では、お困りごとは何? カフェだけじゃ行き届かないよね?
もう一回話し合っていこうよと「地域包括壱岐南モデル準備室」を作りました。
最初に、民生委員さんや自治会長さんにアンケートを頼んだところ、65歳以上の約1300人に配るだけではなく、ほとんどその場で聞き取りまでしてくれました。
結果、庭木の剪定や草取り、家の修理など、そこで生活を続けるための”ちょっとしたお困りごと”が圧倒的に多いことがわかったんです。
そこで、「壱岐南てつだい隊」を発足しました。
マナハウスの強みをイカした役割
(小金丸施設長)
マナハウスは「24時間365日」常に開いていて連絡がつくので、事務局の連絡先となりました。
「てつだい隊」が実際に行なっていることは、庭木の剪定や廃品回収で新聞を束ねること、ごみ捨て等です。
例えば、奥さんが旦那さんを介護している高齢ご夫妻のお宅なのですが、おむつのゴミが4袋も出て、週2回の燃えるごみの日に収集場所まで捨てに行くのが大変なんだそう。でも福岡市は夜間収集なので、中学生が部活帰りにごみ捨てができるんです。お手伝いは1人1回50円。高齢者にとってはありがたいし、中学生にとっては喜んでもらえるうえにお小遣いやお菓子、ジュースももらえる。
これは成功体験にも、自己肯定感の育成にもツナがると思っています。
「困った事が起きた時に自分ではどうしようもない」、だから「施設に入ろうか」「住み替えしようか」と思う方たちに、「大丈夫ですよ。困ったときは私たちがお手伝いに行きます!」と安心を提供しています。
企画から関わってお手伝い
(ケアコネクター 佐藤)
ー マナハウスとして他に行なっている地域貢献はありますか?
(小金丸施設長)
地域のお祭り「いきみないと祭り」や「文化祭」にはお手伝いに行きます。
防災訓練には病院の機能をイカして救護所を作ったり、避難が困難な人たちを介護事業所が迎えに行ったりなど。防災訓練そのものの企画の段階から介護・医療事業所が入っています。普通は自主防災組織があり自分たちで考えてやるしかないので、その意味では企画のところからだとだいぶ違うのでは。
また、地域の人たちに研修や講演をして知識を提供します。子どもたちには介護を伝えるなど積極的に関わっています。
訪問看護師さんにも場所を提供しています。
「マナハウスに行ったことがあるけんね。」
(小金丸施設長)
マナハウスは選挙の投票所にもなっていて、すごくありがたいと言われます。介護と接点のない1400人くらいの人が投票に来るので、施設の広告効果としても大きいです。
この投票に来た人たちが何らかのきっかけで介護が必要になった時に、「よう知らんけど、マナハウスに行ったことがあるけんね」になればいいですね!
施設長が考える、全国の施設にもやってもらいたいこと
(ケアコネクター 佐藤)
ー 他の社会福祉法人さんにお勧めしたい活動はありますか?
(小金丸施設長)
子どもたちへの食事や場所の提供です。
今「子ども食堂」は増えつつあると同時に、無くなっているからです。素人がごはんを作るのは大変で続かない。でも、子どもたちに喜んでもらっていたものが続けられなくなったら、子どもたちの悲しみが何倍にもなるんです。
私たちみたいな施設は、場所や食事を毎食提供できます。子どもたちに老人ホームでご飯を食べていたという経験が、大人になっていく過程で介護に興味を持つきっかけになってくれたら、介護職の人材不足といわれるところにも何らかの影響があるんじゃなかろうかと思います。
困っていることをお手伝いすることでお年寄りにとってはちょっとした安心にツナがったり、食事や場所の提供をすることによって地域の方や子どもたちが笑顔になったり。
マナハウスさんは地域にとって身近な存在となっていることが実感できました。
まだまだご紹介したい取り組みがたくさんあるので、次号以降に続きます!お楽しみに〜!