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Long-term care Efforts Vol.09

介護の取り組み

医療的ケアに挑戦し、介護職員全員でスキルアップ(後編)

社会福祉法人 さわら福祉会 マナハウス

3号に引き続き、福岡市にある「特別養護老人ホーム マナハウス」さんの取り組みをご紹介します。
前編は「地域に根差した特養」についてお届けしましたが、後編は「医療に強い特養」について小金丸施設長とフロアリーダーの神谷(こうや)さんにお話を伺いました!

前編『地域で“顔の見える関係”を〜それぞれが持っている得意分野をイカす〜』はこちら ▶︎

 

お話を伺った小金丸施設長(左)とフロアリーダーの神谷さん(右)

 

介護職員に「経管栄養・喀痰吸引」のライセンスを取ってもらいます!

ー “医療に強い“ という特徴をイカすために、特養としては画期的な取り組みがあるそうですね。

(小金丸施設長)
はい。介護職員全員に「経管栄養と喀痰吸引」のライセンスを取ってもらっています。
経管栄養と喀痰吸引は本来であれば看護職員の業務ですが、看護職員は日中にしかいません。介護職員にも経管栄養と喀痰吸引を行なってもらえるようにすれば、夜勤帯を含めて長い時間でも対応できるのではないかと思いました。
そこで、5~6年前から準備を開始し、介護職員の「経管栄養と喀痰吸引ライセンス取得」の体制づくりを徐々に進めていました。

ついに「2022年4月から夜勤帯に経管栄養と喀痰吸引のライセンスを持つ介護職員を、各フロアに1名ずつ配置する」ことを職員たちと決めて開始しました。当然のことながら、看護職員が行なっていたことを介護職員が夜間に行なうことになるので、業務が増えて負担になります。
ケアカルテと連携しているバイタルセンサーなどの介護ロボットをうまく使って、時間を生み出したい。その時間で、職員は経管栄養や喀痰吸引にも余裕をもって対応することができます。そして、利用者さんの安眠がいつも確保できれば、日中の活性化にツナがっていきます。「生み出した時間をうまく使って利用者に還元するサイクル」をつくることを目標に、フロアリーダーが中心となり職員全員で介護ロボットたちの「データの正確さ」や「機器の良いところ」を確かめながら進めています。

【2022年4月現在】
夜勤を行う介護職員 32名のうち、30名が取得済
(残りの2名についても、3ヶ月程度で取得見込み)

【夜勤帯の体制】
2022年4月から、夜勤帯に介護職員が経管栄養・喀痰吸引を行なっています。
夜勤帯:ライセンスを取得した介護職員5名(4フロア各1名+フリー1名)
利用者数:80名(入居69名、ショートステイ11名)
喀痰吸引:7名、経管栄養:14名

 

ただ、介護報酬の中で夜勤人員配置関連の「夜間職員配置加算」では、算定要件として「看護職員または有資格者の介護福祉士等が1名以上」になっているので、1名配置できればいいわけです。現状では1名でも5名配置していても制度の評価は同じということです。
マナハウスでは「夜勤帯にライセンスのある介護職員を5名配置」しています。

福岡市内では知られるようになってきていますが「医療に強い特養」というブランドイメージを高めていくためにも、マナハウスで実践していることをもっともっと伝えていきたいです。「介護職員が経管栄養も喀痰吸引もやりますよ」「ライセンスも取得していますよ」って、だいぶ説得力がありますよね。施設にとっても特徴の一つになるし、介護職員にとっても自分達のプライドにツナがっていくし、利用者さんにとっても身体的な負担を減らせるので。介護職員が経管栄養と喀痰吸引のライセンスを取れば、これだけ大きなメリットにつながる!としっかり伝えていけたら、介護職員の社会的評価にもツナがるのではないかと思います。



マナハウスならではの取り組みで高いハードルを超える

ー 経管栄養・喀痰吸引のライセンスを取ろうと思ったきっかけを教えてください。

(フロアリーダー 神谷さん)
「介護職員が経管栄養や喀痰吸引を行えるようになる」ことを施設全体で目指すことになり、全職員が研修に参加することになりました。
ライセンスを取得するために、研修を行なっている会社や介護福祉士養成校があるのでオンラインや対面で研修を受けています。講義内容の理解度を確認するテストに合格すると演習を行なって、マナハウスで実地研修を受けます。

 

ー 実地研修は、指導資格のある看護師さんがいるところで受けると聞いていますが?

(フロアリーダー 神谷さん)
マナハウスには指導するための資格を持つ看護師さんが4名もいるので、ここで実地研修を受けられるのです。働いているところで実地研修が受けられるので安心にツナがっています。

(小金丸施設長)
多くの場合、実地研修が受けられる医療機関に行くことになりますからね。まだまだ、自分の働くところで実地研修が受けられるところはそう多くはないですよ。

 

基本研修のシミュレーター演習の様子

 

「職員全員で取り組んでるけんね」

ー 経管栄養・喀痰吸引を行うなかで大変なことはありますか。

(フロアリーダー 神谷さん)
経管栄養は、日中に看護師さんが行なっていたため、実施する時間帯を含めた業務の見直しが必要になりました。
新しいことを始めるのは、みんななかなか大変だという思いもあって「私たちがこの時間帯に経管栄養を行うにはどうするのがよいか」をフロアごとに検討して確実にできるように考えています。4月から始めたばかりなので、これから見直していくこともまだまだあると思いますが、職員全員で取り組んでいます。

喀痰吸引は、口腔内や鼻腔内で吸引をする時のチューブの長さが決まっているため、喉の奥の方でゴロゴロ鳴っているのにスッキリ取りきれないことがあります。取ってあげたいけど取りきれないと、サチュレーション(SPO2)が下がるケースもあるので、経過をよくみて状況に応じた対応が必要になります。特に夜勤の時はライセンスを持っていても不安になることがありますね。

 

ー 経管栄養・喀痰吸引を行うときに心がけていることを教えてください。

(フロアリーダー 神谷さん)
経管栄養は、始めるときの利用者さんの状態や、途中に経過観察をするので嘔吐していないかなど気にかけるようにしています。担当した際は、最初から最後まで責任をもってやっています。

喀痰吸引は、口腔や鼻腔にチューブという異物を入れることになるので、利用者さんにとっては苦しさや痛みがともなうものです。なので、表情や様子を気にかけながら行なっています。苦しくて、涙を流される方もいらっしゃるので「ごめんね。楽になるからね」と声かけをしながら吸引するようにしています。

 

経管栄養を行なっている様子

喀痰吸引を行なっている様子

 

介護ロボットをイカしていく

マナハウスで使われている介護ロボット

マナハウスで使われている介護ロボット

(小金丸施設長)
ケアカルテと連携できるバイタルセンサーや高機能オムツ、自動体位交換エアマットをうまく組み合わせて使っていくことで「人の手を使うよりも正確なもの」や「人の手よりも良いと思えるもの」が見えてくる。「人の手を使わなくてもできること」を介護ロボットたちにやってもらうということ。そうやって機器などをうまく使いこなしていくことで、特に夜勤帯の時間を生み出すことができるはずだ、と考えました。
もちろん、実際に使う職員たちが「効果を実感して確信する」ことが大切だと思っています。

(フロアリーダー 神谷さん)
介護ロボットたちの環境が整備された中で、夜勤帯でいかに活用していくかをひとつひとつ確かめながら行なっています。
自分たちで機器を使って、業務の負担を「減らせるかも…」から「これで減らせる!」となるように進めています。さらに、それらの機器をうまく使いこなしていくことで利用者さんの安眠をさまたげないようにできて、日中業務の活性化につなげていきたいです。

 
 
【夜間巡視について目指していくこと】

現状 今後目指していくこと



バイタルセンサーから脈拍と呼吸数などのデータをiPhoneで確認しながら、訪室しての状態確認も継続 バイタルセンサーから脈拍と呼吸数などのデータをiPhoneで確認して、アラート時に訪室して状態を確認



2時間おきに⾏なっていた⽅に⾃動体位交換のエアマットを使う 夜間の職員による対応回数を減らす



オムツ交換:1⽇4回〜5回の⽅
尿計測をして回数⾒直し後、1⽇3回へ
⾼機能オムツの使⽤で夜間のオムツ交換なしへ
オムツ交換の技術をさらにアップさせる

 
 

さまざまな医療的ケアにも挑戦

ー 医療的ケアが必要な人の受け入れについて、最終的な判断はどこでしていますか?

(小金丸施設長)
受け入れの判断は施設がしていますが、どうしても医療が欠かせなくなるので提携先の病院の協力は重要ですね。
もともとマナハウスは「重松クリニック」の重松院長が作った施設で、透析の患者さんを受け入れるために作られました。そこで透析が必要になれば医療が欠かせなくなり、経管栄養と喀痰吸引の他にも在宅酸素・尿管カテーテル・インスリン・点滴・注射など、さまざまな医療ケアを看護職員とともに行なっています。
透析に関しては「重松クリニック」を含めた複数と提携して行なっていますが、透析以外に関しての医療ケアはすぐ近くの「村上華林堂病院」と一緒に行なっています。法人関係はないですが、普段から連携ができていて私の経験の中で一番良い関係性を築けています。

 
【医療ケア対象者の受け入れ(2022年5月現在)】
看護職員 4.9名、介護職員 37.5名
(うち、経管栄養・喀痰吸引ライセンス取得者 32名(経過措置2名含む))

利用者 80名
・透析 23名
・経管栄養 14名
・喀痰吸引 7名
・インスリン 7名
・尿管カテーテル 4名
・その他医療ケア 6名(在宅酸素、膀胱洗浄、ストマ、点滴ほか)


前編と後編の2回に渡って、マナハウスさんのさまざまな取り組みをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
地域にとって身近な存在であるだけでなく、経管栄養や喀痰吸引によって医療を必要としている方を受け入れていく体制も充実していることがわかりました。
マナハウスさんの今後の取り組みにも大いに期待しています!

お話を聞いた施設

社会福祉法人 さわら福祉会 マナハウス
サービス 特別養護老人ホーム(69名)/ ショートステイ(11名)
住所 〒819-0032 福岡市西区戸切3-20-8
電話番号 092-811-5528
サイトURL http://www.sawara-fukushikai.org/

Coverage, editing:CareConnectJapan Sato,Mochizuki,Ogawa,Saito

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