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Case Study

導入事例

新卒3年後の離職率ゼロ
人材を定着・戦力化させるには

社会福祉法人 さわら福祉会 特別養護老人ホーム マナハウス

ICTの導入により、
多様な人材が長く働ける環境を生み出す

“医療に強く、誤嚥性肺炎になりにくい特養”として、地域に根ざしたサービスを展開する特別養護老人ホームマナハウス(福岡県福岡市西区)。新卒3年後の離職率ゼロで、全体の離職率も低下しているそうです。利用者だけではなく求職者へのブランディング力が高いマナハウスで、ケアカルテを導入した経緯と効果を施設長の小金丸さんに伺いました。

ケアカルテをはじめICTの機器を積極的に導入するマナハウス施設長の小金丸誠さん

「働きたい」「入職したい」と思える環境づくり

透析患者や胃ろう対応など医療が必要な方を積極的に受け入れ、“医療に強い特養”を謳ってきた特別養護老人ホームマナハウス。”2022年4月から夜勤帯に経管栄養、たん吸引を介護職員で行う”ことを目標に、その1年前より職員のライセンス取得を促進。現在は夜間勤務をする介護職員全員がたん吸引等をできる有資格者です。特にたん吸引や経管栄養を夜勤帯に行うことで、利用者の体の負担軽減や日中活動の支援に時間をとることができ、利用者のQuality of Life(以下QOL)の向上にもツナがっているそうです。

(小金丸さん)
職員の技術力が上がってきたと同時に、”医療に強い特養”としてのブランドイメージもできあがってきました。マナハウスといえば透析、経管栄養といえばマナハウス、と。そこを魅力に感じて入職した職員もいます。余談になりますが英語を話せる職員がいて、“マナハウスは英語しか話せない人でも利用できる”という噂が福岡市内で広まったらしく、3名の外国人が入所しました。思わぬニーズがあるものです。 “マナハウスならば任せられる”と思ってもらえるのは嬉しいですね。

ブランディングと並行して力を入れたのがICTツールの導入です。ナースコール、内線、センサー情報、ケア記録をすべてスマホ1台で管理し「ケアカルテ」にすべての情報が集約されるようデータ連携させています。ICTの導入は時間を生み出すことはもちろん、介護の品質向上にもツナがっています。

業務の中には確実にICTを使ったほうがいいものがあります。たとえば看取りがあるとき、夜勤の職員は勤務中すごく不安になるんですね。看取りなのでいつかは呼吸が止まると覚悟しますが、いつ止まるだろうか、いつご家族に連絡すべきか、と10分に1回は確認しに行きます。夜勤体制は20人対1人ですので、肉体的にも精神的にも負担がかかる仕事です。
そこで常時見守りしてくれる”バイタル機能がついた見守りセンサー”を入れたことにより、負担が大幅に減り、安心感も確実に得られるようになりました。介護品質の向上と介護負担の軽減が同時に叶いましたね。
 

どんなソフトとも連携ができる強み

マナハウスは、ケアカルテの前身「ちょうじゅ」から記録システムの利用をスタートしました。
24時間シートに対応しており、当時はiPod touchで記録できることが新しく、使い勝手の良さも決め手だったそう。それからいろいろなICT機器を導入していったマナハウスにとって、「ケアカルテの連携機能」はとても重宝しているといいます。

(小金丸さん)
それぞれのシステムが独自の帳票を出していますが、『ちょうじゅ』や『ケアカルテ』は各々の帳票に対応してくれます。他社のソフトではなかなかそうはいかず、その都度オペレーションの手間が発生したり、PCを新たに用意しなければならなかったり…。ケアカルテならば、たとえばインカムの音声入力もスマホ1台持っていれば可能だし、バイタルセンサーやナースコールの記録も介護記録に自動で入ります。『ケアカルテはどんなソフトとも連携できる』から、今後も色々な機器導入にチャレンジしようと思えます。
ICT導入は、介護の品質向上とご家族への安心感にもツナがっています。

介護記録が欲しいというご家族には、さっと印刷してお渡しします。そのような時、何を言われるんだろう?と構えてしまう施設も多いはずですが、当社には正確な記録があります。いつご家族に見ていただいてもいいように正しく記録する意識が働き、職員の記録技術も向上しています。

将来的にはご家族が介護記録を自分のスマホで確認できる環境をつくりたいと考えており、「自分の家族はこんなふうに介護されているんだ」「食事はちゃんととっているな」という安心感を付加価値にしたい。介護の様子を全てご家族に伝えることは、職員の介護への思いを知っていただく機会にもなります。
 

機械の導入が多様な人材の働く環境をつくる

機械や機器を積極的に利用することで、多様な人材が働きやすい環境をつくる効果もあります。たとえば、比較的年配の職員が膝を痛めて入院し「もう人を抱えられないので介護職をやめる」と話をされた時には、小金丸さんはその職員のために床走行リフトを導入したそうです。それから2年半、彼女は今も働き続けています。

(小金丸さん)
リフトは30万円弱ですが、一人の職員が働き続けてくれると考えたらものすごく安い。それもベテラン職員が就業継続できると考えれば30万円なんて微々たるものです。欠員が出た時に一番欲しいのは即戦力。その即戦力は今働いている人です。だから人が辞めない環境をつくるのが一番だと私は思っています。リフトを導入してから、他にも良い効果があったといいます。周りの職員も真似してリフトを使い始めると、足腰の負担が軽減でき、安全に使えることが分かってきました。

介護職はどうしても時間に追われます。リフトを使うと移動に10倍以上の時間がかかってしまう。しかし逆に、リフトで昇降している間は利用者さんとコミュニケーションをとることができるのです。時間を有効活用することで、新たな価値が生まれました。


 

選ばれ、働き続けられる職場に

同社は直近4年ほど、中途採用をしていません。例えば人材紹介には1人につき年収の約30%を支払うため、コストが増えてしまいます。しかし介護福祉士養成校の学生採用と、人が定着する環境をつくることで採用費も大幅に軽減できます。採用成功の秘訣は、やはり働きやすさです。

(小金丸さん)
「ICT機器の導入は、利用者さんのためにという思いは当然ありますが、働く自分達にとってどんなメリットがあるかを必ず伝えます。もっと楽に、安全に仕事ができる道具だと。仕事は生活をするための一つの手段。同じ給料をもらうならば、楽に、安全に、仕事をしてほしいと思っています。今後はさらに、QOLを高める介護を目指していきます。

経管栄養を夜間に行い、ICTによって削減できた夜間の時間と労力を利用者の日中支援にイカしたいと考えています。基本的には夜間の定期巡回をなくし、オムツ交換や体位交換も夜はせず、利用者さんにはゆっくり休んでいただく。そうして日中覚醒してもらって、食事をよく取り、免疫力を上げれば誤嚥性肺炎のリスクも減ります。職員も休みやすく、時間を利用者のために使うことができれば、日中のQOLを上げたより良い介護にツナがると思っています。

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