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稼働率96%以上の超強化型老健でも
高品質ケアを提供し続けられる理由

一般財団法人 弘潤会 介護老人保健施設 シルバーケア野崎

宮崎県宮崎市の介護老人保健施設 シルバーケア野崎では、平均稼働率が令和2年は定員80名に対して76名。令和5年ではさらに増加し、96%を超える77名という数字が出ています。稼働率が高くても”利用者さんに選ばれる”質の高い介護が提供されている現場の秘訣について、事務長の吉田暁生さんと介護職員の斉藤雄介さんにお話を伺いました。


 

― センサー機器を用いた介護ケアで、高い稼働率でも高品質なケアを提供できていると伺っています。どのような機器をどういった形でケアに活かされているのか教えてください。

(斉藤さん)
私たちが利用しているセンサー機器は『パラマウントベッドの見守り支援システム(以下:見守り支援システム)』と『ココヘルパG』です。

『見守り支援システム』は全床に設置しているのですが、全ての利用者さんの位置や呼吸がモニターで可視化されるので、いつでもどこからでも状況を把握できるようになっています。センサー機能もついていて、起き上がりや離床の際にも知らせてくれることから、従来のサイドセンサーや床センサーと併用すると「二重のセンサー」としても活用しています。例えば、見守り支援システムで離床の通知が来たのに、床センサーが作動しなかったとしたら「スイッチの入れ忘れである」と気がつくことができます。実はセンサーのスイッチ入れ忘れによる転倒事故は少なくありませんでした。巡視の際に転倒しているのを発見してセンサーを見るとオフになっていた、大声が聞こえて飛んでいくと転んでしまっていた、などということは実際にあります。二重のセンサーは、このような事故を減らしているため、ありがたいと感じています。
また、見守り支援システムのカメラシステムも15台導入し、転倒リスクの高い利用者さんに対して利用しています。センサーが反応した時はすぐに手元のスマホで居室を見ることができるため、見守りの強化にもつながっていると言えます。

『ココヘルパG』では赤外線センサーとサイドセンサー、床センサーを使用しています。この赤外線センサーの良いところは、小さくてどこでも設置できることです。これまでは設置が難しかった個室トイレなどにも、問題なく設置できて見守りを行なうことが可能となりました。また従来は、ずっと付き添いが必要な利用者さんの排泄介助の際には他でコールが鳴ってもそちらへは行かれなかったのですが、このセンサーを導入したことで、トイレからは一旦離れ他で鳴ったコールに対応して赤外線センサーが反応したらトイレに戻る、といった複数の対応が同時にできるようになり、ケアの幅が広がりました。
あとは、インカム機能がついていて「〇〇室に行けますか?」などとスマホ経由で連絡し合えるので、周りと連携しつつ見守りができています。本来の担当範囲のケア以外にも時間を割いてフォロー対応することが可能になり、随分と介助対応を効率化できていると感じています。
 

― そのほかに、スタッフの負担が減った事例はありますか?

(吉田さん)
センサーの導入前は何が起きているかを把握するために、夜勤帯の巡視は20時、24時、3時の3回、全ての居室を確認していました。それが今は、モニタリング用の画面を見れば状況を把握することができ、アラームも作動しますので「必要な時に、必要な場所へ行く」形に変化しました。これによって巡視効率が上がり、利用者さんに対する一つひとつのケアの質も高められ、同時にスタッフの負担も軽減できています。
 

― センサー機器の活用以外で「高い稼働率でも高品質なケアを提供」できる秘訣はありますか?

(吉田さん)
毎週金曜日にケアカンファレンスを行ない、利用者さんの現状を共有したり次の方針を相談していますが、その際に職員の伝達や申し送りの手段として”ビジネスチャット”を活用しています。ケアの変更点や確認事項、利用者さんの状況の変化なども即共有することができ、スムーズな伝達に役立っています。
また、勤務帯がどうしても変則的となるので、ケア方法に関する相談などで担当者が対面で直接伝えるタイミングがなかなか合わないことは、大きな課題でした。そこにビジネスチャットを利用することで、担当者が休みでも全職員に対してケアの変更点などの情報共有が確実にできるようになり、認識のずれもなくなっています。

(斉藤さん)
介護記録にはケアカルテを使用しています。過去の利用者さんの記録をスムーズに、みんながどこからでも確認できるようになっています。数多くのスタッフが場所や時間を選ばず自由に記録を閲覧したり編集したりできることは、常に最新の情報を得る、ということにおいてとても助かっています。

(吉田さん)
ケアカルテは平成28年に導入しました。私たちは通所と入所を行なう介護老人保健施設で、スタッフの人数も多いです。デバイスの台数もPCが50台、タブレット16台・・・そのすべてにケアカルテを実装しています。みんなが同じ情報をタイムリーに見ることができる、それがケアの質を上げることにつながっていると考えています。
また、ケアカルテでは入力した体重や血圧の記録を自動でグラフにしてくれるので、見守り支援システムの”眠りのデータ”と照らし合わせ、ドクターに提示しやすくなりました。これまでは利用者さんの眠りの状況について、「この方はよく眠れているようだ」「あまり深く眠れていないみたい」というように主観的な感覚による話しかできませんでしたが、数値の変化と眠りのデータを可視化したものを示すことで、深い専門知識がなくてもドクターと一緒に今後の方針を決める場面などに役立っています。


 

― 一方で、ICT機器導入の失敗談などもあれば教えてください。

(斉藤さん)
そうですね……介護の際や重たいものを持つ時に活用するアシストスーツは、導入したものの今ではほとんど使わなくなってしまいました。

(吉田さん)
アシストスーツは令和元年に導入しました。その時は介護ロボット事業に着手し始めた頃で、値段や補助金を確認しながら4台を導入しています。いざ運用を始めたものの、使いたい人が使えなかったり、着脱に手間や時間がかかることから、だんだんと使用しなくなり倉庫に眠らせることとなってしまいました。見込みの甘さを実感した失敗事例ですね。
もちろんスーツ自体は高機能で便利な機器なのですが、シルバーケア野崎では、業務の流れの中でちょっと合わなかったかな…と反省しています。その経験を活かし、センサーは「全床に導入したほうが一元管理をしやすく活用されるだろう」との考えにも至ることができました。良く言うと、失敗を元にして今回の導入へ踏み切ることができたのだと思っています。
 

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― 現在の課題と今後の展望などをお聞かせください。

(吉田さん)
センサーの導入によって利便性が上がり「危険動作」や「気づくべきポイント」を感知しやすくなったメリットはあるものの、一方でこのままメリットをつき進めると”過度なセンサーの導入”にもなりかねない、と懸念しているところがあります。
機器があるほど便利にはなるけれど…コールに全て応えることができるのか。リスクを取り去り過ぎた結果「スタッフの主業務はコールへの対応」となってしまう未来は避けたいです。やはり、どこかで線を引かなくてはならないと思っています。
このようなところが、これからの課題なのかなと考えています。

(斉藤さん)
世の中に数ある施設の中からシルバーケア野崎を利用していただいていることは、とても嬉しく感じています。上手にICT機器を使うことで利用者さんと直接向き合う時間をしっかりと確保して、”高い稼働率でも質の良いケア”を行ない、「ここは良い施設、選んでよかった」と言っていただけるような介護をこれからも実現していきたいです。


 

福岡市西区にある特別養護老人ホーム マナハウスさまで行われたケアカルテユーザーの討論会にシルバーケア野崎さまが参加されました。討論会の様子を記事でご覧いただけます。

ケアカルテ×ハナストユーザー同士の学びがここにある

お話を聞いた施設

一般財団法人 弘潤会 介護老人保健施設 シルバーケア野崎
サービス 介護老人保健施設、短期入所療養介護、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション、居宅介護支援事業所
住所 〒880-0837 宮崎市村角町高尊2105
電話番号 0985-28-6555
サイトURL https://www.koujunkai.jp/scare

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