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転倒事故が半減。見守りとプライバシーを両立する「次世代予想型見守りシステム」とは

ノーリツプレシジョン株式会社

介護業界では人手不足が常態化しつつあり、もはや待ったなしの状況です。そんな現状を打破すべく、メーカー各社は介護ロボットの開発を進めてきました。今回は、活躍が期待される介護ロボットのひとつ、見守りセンサーの開発を牽引されてきたノーリツプレシジョン株式会社の宝溝誠治(ほのみぞ・せいじ)さんにお話を伺います。


 

—介護業界における人手不足は深刻さを増しています。人手不足解消のための一手として、介護ロボットの活躍が期待されていますが、導入はどれくらい進んでいますか?

「介護ロボット」と呼ばれるテクノロジーが導入されているのは全体の2割程度と言われており、人の手だけに頼って介護を行なっている事業所がまだまだ圧倒的に多いのが現状です。どうしてここまで活用が進まないのでしょうか。あるアンケート調査によると、導入していない施設の約4割が「一番のネックは”コスト”だ」と回答しています。確かに介護ロボットは1台数十万円、中には百万円以上になるような高額なものもあり、その費用を捻出するのは容易ではありません。ですが、将来的に企業間の価格競争によって介護ロボットの価格が下がっていくことを考えると、コスト面での導入のハードルは徐々に下がるでしょう。


 

—では、長い目で見れば徐々に活用は進んでいくと期待できますか?

実は、コスト以外にも介護ロボット浸透のために乗り越えなければならないハードルがあります。それは、介護現場で働く方々の心理面です。介護に携わる方々の「介護は人の手でやらなければいけない」「人と人とのふれ合いを大事にしたい」という優しさが、感覚としてロボットの存在を排除してしまうことがあるのです。また、介護ロボットの実態や使い方を知らないといった情報不足や、現場の流れを変えなければいけないという心理的負担も、介護ロボットの活用を阻んでいると感じています。


 

—介護ロボットが介護業界の人手不足を打破する段階に至るまでは、コスト面だけでなく心理面でのハードルも越える必要があるのですね。そのような状況で、現在はどんな種類の介護ロボットの活躍が進んでいますか?

介護ロボットを導入している施設の約4割が、センサーなどによる「見守り」に特化したロボットを活用しているという調査結果が出ています。バックヤードに目を移すと、記録や請求業務などの場面でICT化が進んでいますが、介護に直接的に関わる場面では見守りセンサーがやはり多いようです。


 

—見守りセンサーが活躍している背景には、どのような状況があるのでしょうか?

人手不足がもっとも深刻なのは、やはり夜勤帯です。少ない人員でご利用者の安否を確認しなければならず、肉体的・精神的負担が大きくなりがちです。見守りセンサーがあれば、眠っているご利用者の様子を人の目だけに頼らず見守ることができるため、スタッフの負担を大きく減らすことができますし、負担が少なければ人手を確保しやすくなります。そのような背景から、多くの施設で見守りセンサーが導入されているのだと考えています。
また、近年ではご利用者のプライバシーを守ることが重要視されるようになり、そういった時代背景も影響していると思います。見守りセンサーを導入していない施設では、スタッフがご利用者のお部屋に入って確認をしますよね。ご利用者からは「ノックして『入りますよ』と声をかけていただいても、やはり落ち着かない」という声も耳にします。見守りセンサーは監視カメラのようなものとして、それこそプライバシーを侵害されてしまうのでは?という認識を持たれるかもしれませんが、カメラとセンサーは別物なのです。
 

—見守りセンサーを導入することで、スタッフの負担軽減やプライバシーへの配慮を実現できるのですね。他にはどういった効果を期待できるでしょうか?

1つは、転倒事故を大幅に減らせること。もう1つは、記録を分析などに活用しケアの質を向上できることです。ところがセンサーの種類によっては、こういった効果を得にくいこともあります。たとえば転倒事故でいうと「トイレへ行くための起床」が原因である場合が多く、これを防ぐにはベッドから下りて歩き始めたことを感知する必要があります。ですが床に足が着いたことを感知するタイプのセンサーでは、センサーが離床を感知して警報を鳴らした時点では既に立ち上がっており、急いで駆け付けても間に合わないことが多いのです。他には光学式センサーを活用したタイプもありますが、感知は早くできるものの誤作動が多いのが難点。寝返りを打ったり、手を上げたり、布団がずれてしまったりという場面でも警報が鳴ることがあるため、その分スタッフへの精神的な負担が大きくなってしまいます。
そこで弊社では「シルエット式」センサーを採用した「ネオスケア」を開発しました。ネオスケアは骨格の動きで離床を感知するため、寝返りなどによる誤作動がほとんどありません。


 

—シルエット式のネオスケアでは、プライバシーを守りながら本当に必要な通知だけを受け取ることができるのですね。実際にネオスケアを導入された施設ではどのような成果があったのでしょうか?

調査したところ、ヒヤリハットを含めた1人あたりの1ヶ月の転倒回数が48%減と、ほぼ半減する結果となりました。また、見守りのためのスタッフの歩行距離が、ネオスケア導入3ヶ月後には約30%減少。この数字は、夜間スタッフが10名前後いるような大きな施設であれば、夜間スタッフの配置緩和も可能になる数字だと思います。夜間スタッフが2名前後の比較的小規模な施設でも夜間巡回にかかる時間を削減でき、「削減できた時間でご利用者とのラポール(良好な信頼関係)を築けるようになりました」という声をいただいています。
ネオスケア単体での活用だけでなく、「ケアカルテと連携することでさらに大きなメリットが得られた」という施設もあります。ネオスケアの分析データをケアカルテで一括管理することでデータの分析がしやすくなり、”根拠”に基づいたケアの計画が作れるようになっただけでなく、無駄な作業が減り事務効率が3割アップしたのだそうです。そういった成果も踏まえ、福祉ソフトとの連携を強化した新機種を発表しました。価格は据え置きでありながらWi-Fiの中継機も備えており、より施設内で活用していただきやすくなっています。


 

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—介護職員の人手不足解消に向け、これからの見守りセンサーの発展や見守り業務の改善について考えをお聞かせください。

冒頭でもお話しした通り、介護ロボットが普及するためには介護職員の方々の心理的なハードルを乗り越えることが重要だと考えています。私はこれまで介護ロボットについて介護施設の方々に伝える時、「介護ロボットは道具であって、人間の能力を拡張してくれます。うまく使いこなしていきましょう!」と言ってきました。ところが「新しい道具を使いこなせるかな?」という不安や拒絶感を示す方の割合がとても多かったのです。中でも管理者など年配の方にそういった傾向がありました。そのような反応を見てどうしたら受け入れてもらえるのだろう?と考え続けた末にたどり着いたのは、「ロボットは道具ではなくて、一緒に働く仲間なんですよ」という伝え方でした。今、私はネオスケアについて施設の方にお話しする時に「ネオスくん」という呼び方をしています。それは、ネオスくんというスタッフが一人増えた、そんな心持ちで受け入れてもらえたらと考えるからです。これからは、ネオスケアに限らず、さまざまな介護ロボットが介護施設で働く方々にとっての”優秀な仲間”として受け入れられ、普及していくよう願っています。

〈問合せ先〉
ノーリツプレシジョン株式会社
〒640-8550 和歌山市梅原579-1
TEL:073-456-3966

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