Vol. IKAsu IKAsu Vol. TUNAgu TUNAgu

Case Study

ケアカルテ活用/運用事例

記録残業は ほぼ「ゼロ」へ
データ分析・活用でQOL向上に貢献

社会福祉法人 欣彰会 高齢者総合福祉施設 敬寿園

さいたま市を拠点に病院と連携しながら、高齢者に対し「総合的」「一体的」かつ切れ目のない「包括的」な医療・ケアを提供する『社会福祉法人欣彰会』の「敬寿園」は、特別養護老人ホームの定員が82名、短期入所が定員18名、従来型個室・多床室を有する総合福祉施設です。
2000年4月の開設以来、利用者さんの眠りの質や生活の質(QOL:Quality of Life)向上を目指している同施設に、ケアカルテ導入のきっかけや、センサー機器との連携により実感した効果について伺いました。
 

『ケアカルテ』を導入してから いくつもの効果を実感

―ケアカルテを導入して感じたメリットを教えてください。

ケアカルテ導入による一番の効果は、記録のための残業時間がなくなったことです。ほぼなくなったと言っても過言ではありません。ケアカルテを用いて業務中に記録が完了するため現場の負担も軽くなり、削減できた時間によって利用者さんとの接点が増えたのは何よりもありがたいです。
また、情報を一括管理できることも大きなメリットです。以前はフロアのPCごとに情報を保存していましたが、ケアカルテを導入してからは場所を選ばずどこでも誰でも情報を確認できるようになりました。

機能訓練の場面でも、ケアカルテの活用による効果を感じています。これまでは紙ベースで評価を記録してきたのですが、ケアカルテ導入後は機能訓練で実施したことをPCやモバイルで記録し、統計的評価が即時かつ的確にできるようになりました。ケアカルテで記録を整えると詳細な分析ができるので、いろいろな訓練メニューを考えられて役立っています。各利用者さんに合ったメニューを考えることが、ケアカルテのデータのおかげでできています。

さらに、ケアカルテは他社のセンサー機器との連携ができ、測定したデータがケアカルテに反映されるので、取得・確認できる情報がより充実し、さらに詳細な分析にも役立ちます。敬寿園ではパラマウントベッド株式会社の「見守り支援システム」を導入して、データ連携を有効活用しています。


 

介護は人が主役 サポートにロボットを活用

―ケアカルテと連携できる「見守り支援システム」を導入したきっかけを教えてください。

「見守り支援システム」を導入している施設のパンフレットを拝見した際、PC画面で入所者の眠りの状態が把握できるところに目が留まりました。介護福祉サービスにおけるロボット導入が推進されている一方で苦手意識もあり躊躇していたのですが、見守り支援システムにより、巡回だけでは判断が難しかった利用者さんの眠りの状態も把握できるようになると知り、眠りの質の向上につながるのではないかと感じました。

私は、介護される方は”人”に介護されたいのでは、と考えています。今もロボット導入に懐疑的な部分があることは否めません。例えば、スタッフが腰を痛めないためにリフトが有効であることはわかっていますが、できれば2人で行うオペレーションを検討するなど体制面の整備によって改善したい。「人が人を介護すること」が大切で、介護される方も安心するのでは、とこれまで考えてきました。
ですが、「人の力で介護をしていきたい」という思いはそのままに、それをサポートする部分をロボットで補えたらいいのではと考えが変わってきたのです。実際に製品を見に足を運び、本当に眠りにこだわった製品であることや、利用者さんの眠りの質が高まり生活も変わって活性化にも期待が高まることをあらためて実感し、導入を決めました。
 

ケアカルテとの連携が利用者さんのQOL向上をサポート

ー見守り支援システムの活用について教えてください。

主に、利用者さんの夜の排泄リズムを把握するために活用しており、目に見えた成果があったと感じています。例えば、見守り支援システムを使うことで利用者さんのおむつをはずすことができた、というケースがあります。見守り支援システムで集めた情報を『ケアカルテ』で時系列に見ることで、「この時間は起きているな」「この時間は眠っているな」と、眠りの状態をデータとして把握できるようになりました。データを元に、起きそうなタイミングを狙ってお手洗いへ行くサポートをすることで、結果として全くおむつを使わない状態へ移行することができたのです。

また、決まった時間に食事を摂るとどうしても眠くなってしまっていた利用者さんのケースがあります。見守り支援システムの情報から覚醒し始める時間を把握し、その時間にお声掛けをすることで、しっかりと食事が摂れるようになりました。
他には、新規で入所された方やショートステイの方の睡眠状況を把握することにも用いています。
看取りの際にも、心拍数と呼吸数がわかることから、状況の変化をデータとして見ることができます。前兆といいますか、息を引き取られる数日前からの変化が読み取れて、最期の時が近いと知ることもありました。


 

願うのはご利用者さんの健康寿命を長くすること ただそれだけ

―ケアカルテや見守り支援システムを導入されて経済効果などはありましたか。

私たちには、少ない人員でケアをするための導入という発想はありません。
ただ、仕事的に負担が大きく事故が絶対にないとは言えない状況で働いておりますから、スタッフや利用者さんの生活を守ることを考え、ツールとして便利なIoTやロボットを導入することで、精神的な負担を減らし気持ちの緩和をすることは必要だと思います。
人間相手のお仕事ですから、施設の支出を抑え効率化をはかることよりも利用者さんの健康管理をしっかりとすることで、入院される方を少しでも減らし健康寿命を長くすることができるように。大きな枠組みでの経済効果でいえば、そちらを求めていきたいと切に願っています。
 

ケアカルテを活用して自立支援介護の可能性を導き出したい

―今後はどのような展開をお考えでしょうか。

敬寿園の利用者さんは平均介護度「4.2」と高い方が多く、国が特別養護老人ホームに求めている”自立支援介護”の推進について理解はしているものの、対象となる方は決して多くないのが現状です。
機能訓練やリハビリを通して、その方のできることを導き出すためにケアカルテのデータを分析・活用しながら、傾向や特色を見出して自立支援につなげていくことを、今後の展開として進めたいと思っています。

お話を聞いた施設

社会福祉法人 欣彰会 高齢者総合福祉施設 敬寿園
サービス 特別養護老人ホーム
住所 〒337-0024 埼玉県さいたま市見沼区片柳1298番地
電話番号 048-686-2611
サイトURL https://www.keijuen.info/keijuen

『月刊ケアカルテ』へのご意見、ご感想をお寄せください

無料セミナー申込受付中