茨城県日立市にある成華園は、太平洋を望むことができる自然豊かな特別養護老人ホームです。配薬の仕組みや業務のICT化などあらゆる業務の見直しを図った結果、残業や紙の大幅削減に成功。
今回は、同園施設課・介護課長の岸田卓也さんにケアカルテ活用のポイントやこれからの展望について伺いました。
ーケアカルテを導入したきっかけを教えてください。
4年ほど前のことですが、ある研修や毎年恒例の福祉機器展でケアカルテの説明を聞いてとても良い印象を受け、「自施設で使いたい」という思いになりました。そこから独自に調査や分析を始め、契約に向けて具体的に動き出そうという方向性になったのです。
その時点では別の会社との契約が終了していませんでしたが、システムが使いにくいと感じており、契約が切れるタイミングでケアカルテに切り替えたいと交渉しました。
ケアカルテの良さは感じていましたが、システムの入れ替えによる改善点を可視化する明確な数字が無いと、経営層には動いてもらえません。そのため数値化した目標を立てて、達成するために必要なツールであることを伝えながら導入を進めていきました。
カスタマイズにより
施設間でスムーズな情報共有を実現
ーケアカルテを導入するにあたり、決め手となったのは何でしょうか。
また導入後、ケアカルテをどのように活用されていますか。
私個人としては、営業担当の土屋さんの人柄の良さが大きな決め手でした。
経営目線では、導入により中長期的に見るとコスト削減に繋がると確信がありました。
導入費用は他社のほうが安かったのですが、長い目で見た場合、ケアカルテのほうがコストは低く、6年目で100万円、10年目だと300万円もの違いが出るという試算になったのです。
運営上では、記録のICT化にあたりカスタマイズ機能が豊富なことが決め手でした。
特にそれを実感したのは、本体施設とは別にサテライト(同園の地域密着型特別養護老人ホーム)ができた際の入所受付業務です。
入所の申し込みは本体施設とサテライトを合わせて考えるのですが、以前は紙ベースで申し込み情報を別々に管理していました。利用希望者1人当たりの提出書類は5枚〜10枚。本体とサテライトを合わせると150名近くの利用希望者さんがいましたから、全員分ではものすごい紙の量です。そうなるとやはり相談員同士の情報共有がうまくいかない。その結果、入所枠も埋まらないという事態が起きてしまうのではないか?と危惧していました。以前導入していたシステムでは、拠点間の情報共有をするために何十万円もするキーを差さなければならず、それもスムーズな情報共有を妨げていました。今では、本体もサテライトも同じソフト上で全ての申し込み情報にアクセスできます。拠点間・職種間で情報共有しやすいカスタマイズにより、受付業務がスムーズになりました。
「書かされている記録」から
「楽しみながらつける記録」に変化
ー紙が減るというだけでもたくさんのメリットがありそうですね。
そのほかには、ICT化によってどのようなメリットがありましたか。
記録にかかる時間が削減できたことです。
たとえばバイタルの記録では、2分かかっていたのが半分の時間で済むようになりました。フェイスシートも、以前は紙で出して、チェックして、清書して…というように大変時間がかかっていたのですが、今はPCで打ち込んで、誤字脱字をチェックするだけになりました。削減した分の時間は、利用者さんとの時間に充てることができています。
残業時間がものすごく減っていたことも驚きました。導入したのは2022年の4月17日ですが、2022年5月1日時点でタイムカードの打刻時間が明らかに早くなっていました。導入からわずか2週間でここまでの結果が出たのは嬉しかったですね。
あとは記録を「楽しみながら」してくれるようになった点も良かったです。以前は職員の中に「書かされている」という意識があったように感じられましたが、現在では職員が自ら写真を撮ってデータに入れておいてくれます。荷物チェックも、以前はチェック表に正の字を書いて確認していたのですが、今は写真を撮って取り込むだけです。何が何枚あるかだけでなく、色や柄といった詳細な記録も残せるようになりました。
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ーこれからの展望をお聞かせください。
これまでアセスメントシートは半年に1回、手書きで作成していました。
手書きも大変な作業なのですが、何より大変なのは、ご利用者様の基本情報を一つずつ探して、計算して、記入すること。食事や排せつ等の現況をデータ化する事が非常に時間が掛かっていました。データから生活課題を導きだし、アセスメントシートに記入するだけで2時間以上は掛かっていました。
今回のカスタマイズで、「記録データ取り込み」を押すだけで、そういった項目がパッと入力されるようになりました。前回の記録との比較も簡単にできるので、「前回より体重が緩やかに減っている」ということもすぐに分かります。あとは、記録に沿って目標や課題のアセスメントをする。本来注力すべき項目に時間をかけられるようになりました。
アセスメントシートの作成時期は時間外業務をせざるを得なかったのですが、これからは勤務時間内で取り組めるような環境づくりをしてあげたいなと思っています。