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看護師の働き方にゆとりが生まれ
働きやすい組織へ

ドクターメイト株式会社

介護施設における医療的対応の需要は年々増加する一方です。そのため介護施設で働くスタッフへの負担は増すばかりで、とりわけ医療的対応をおこなう看護師の負担は大きく、職場環境に問題を抱えるような施設では採用率・定着率の悪化を引き起こしています。このような状況を改善するためには、「医療」が「介護」に寄り添うこと。その実現のための”ICTの活用・DX化”がカギとなります。今回は、介護と医療をDX化でつなぐ取り組みをされているドクターメイト株式会社の代表取締役であり、医師でもある青柳直樹さんにお話を伺います。


 

—皮膚科医としても活躍されている青柳さんですが、医師という立場からみて、介護の現場にある課題とは何でしょうか?

医療との関わりに注目して現場を見ると「3つの課題」が浮き彫りになります。
1つ目は通院の負担です。介護事業所の利用者さんが何らかの理由で病院を受診しようとすると、病院に連れて行って医師の話を聞くだけで半日、地方だとより深刻で1日がかりになってしまうこともあり、利用者・介護者の双方にとって大きな負担となっています。

2つ目の課題は嘱託医が全ての診療科領域をカバーできないこと。これは現代医療が高度に細分化・専門化されているためです。実際、専門領域外の症状の場合は対応が難しく、現場で働く方々からは「気になる症状があっても、嘱託医に専門外のことは聞きにくい…」という声を耳にすることもあります。

そして3つ目は人手不足。介護業界ではどの職種も厳しい状況で、もちろん看護師不足も深刻です。「24時間365日看護師1人体制」からの脱却が求められていますが、裏を返せばそのような施設が全国に数多くあるということです。介護施設の看護師採用が難しい理由の1つに「夜間オンコール対応」が挙げられます。コールを受ける側の看護師は、担当の日は夜間でも常に携帯を持っていなければならず、お風呂、トイレ、就寝時も気が休まりません。プライベートでも「アルコールを飲めない」「旅行の予定が立てづらい」など大きな制限がかけられてしまうため、夜間オンコールがある介護施設では働きたくない、と敬遠されてしまうのも無理はありません。


 

—介護施設側から病院・医師へアクセスすることの難しさ、医療的判断ができる職員の採用難が大きな課題であることが分かりました。この課題の背景にはどのような事情があるのでしょうか?

介護施設側の医療的負担や役割が大きくなっていることが背景にあると思います。近年、病院は介護型療養病床が削減されていることや、DPCシステム(新しい入院医療費の計算方式)の導入によって患者を早く退院させる傾向にあり、その分自宅や介護施設での医療的対応や負担が増えるという図式になっています。若い人に比べ高齢の方は治癒のスピードがゆっくりであるため、ある程度症状が回復してきたところで介護施設に戻っていただかなくてはなりません。かくいう私も以前は患者さんを介護施設へ送り出す側の身として、本来は退院後の医療提供体制を病院側が考えておくべきと知りつつ、そこまで手が回らない現実と葛藤していました。ですが、高齢化と生産人口の減少が進む現在の社会を考えると、今後も介護施設への負担は増え続ける一方であることは間違いありません。そんな現状をどうにか打破したいと思い、介護施設における医療アクセスのDXサービス「ドクターメイト」を立ち上げました。


 

—「医療アクセスのDX化」。気になる方も多いと思います。具体的にはどういったサービスなのか教えてください。

私たちが提供するサービスは「日中医療相談」と「夜間オンコール代行」です。これにより介護施設における医療的負担と人手不足を解消し、結果として「持続可能な介護」を創ることを目指しています。
「日中医療相談」は、介護施設スタッフからの入居者に関する相談に対し、ドクターメイトの専門科の医師がチャットで回答するサービス。そして「夜間オンコール代行」は、介護施設の看護師に代わってドクターメイトの看護師が夜間オンコールの対応をするサービスです。サービスを立ち上げた当初はまだ医療にオンラインが普及しておらず、介護の現場からは理解を得にくい状況でした。ところが新型コロナウイルス感染症の拡大によってオンライン診療が普及したことが追い風となり、少しずつサービスの提供範囲が広がってきています。


 

—「日中医療相談」と「夜間オンコール代行」によって、現場ではどんな変化が生まれていますか?

まず「日中医療相談」に関してですが、病院に行かずとも医師からのアドバイスを受けることができるので、通院にかかる時間と負担が軽減されています。ある施設の調査では、通院数が皮膚科で70%、精神科では53%減少したという結果が確認されました。夜間の救急搬送も明らかに減っている結果が出て、これは重症な時を除きある程度軽い症状であれば、施設内でも対応できるようになっているからと考えています。嘱託医の専門外の領域もカバーできるため、”総合的な医療対応ができる施設”としての魅力づけもできます。
「夜間オンコール代行」に関しては、採用面で大きな効果があったようです。ドクターメイトを利用してくださっている施設の方からは「施設の立地が悪いことで採用をあきらめていたが、夜間オンコール対応がないことをアピールしたところ採用につながった」「看護師から『待機番もどんどんやります』と言ってもらえるようになった」という声が寄せられたようです。また、すでに勤務している看護師からは「夜間業務の負担が減ることで日中の業務に集中できるようになった」と嬉しい声をいただいています。


 

—スタッフの負担を減らしながら利用者の安心も実現できるのですね。ご家族の方にとっての安心にもつながりそうです。

夜間オンコール代行はお電話を受ける対応に加え、具体的な症状や経過といった項目をまとめたレポートもお出しするのですが、スタッフ間の引き継ぎやご家族へのご報告にもお役立ていただいているようです。外部の医療者が見てもしっかり情報が伝わるので、適切な治療に結びつけることも可能です。そういった面では、ご家族の方の安心にもつながっているかもしれませんね。


 

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—DX化によって医療と介護がつながるメリットは大きいですね。ぜひ今後の展望をお聞かせください。

オンライン診療は規制緩和が進み世間的にも普及してきていますが、外部の医療リソースを使うことに関しては、まだまだ制度的に整っていない面があります。たとえば現状では、夜間オンコールは施設の看護師+1名で対応しないと加算が取れませんが、夜間オンコール代行を使っても加算が取れる仕組みがあれば、医療を外部リソースに頼るという空気が生まれるのではないかと思います。そのような制度的な課題を乗り越えて、いずれは介護に携わる多くの方々に『医療的対応で困った時は、ドクターメイトに頼めばなんとかしてくれる』と思ってもらえるような、介護業界のインフラになれたらと願っています。


 

〈問合せ先〉
ドクターメイト株式会社
〒103-0004 東京都中央区東日本橋三丁目7番19号 東日本橋ロータリービル9階
TEL:03-6822-5055
WEBサイト:https://doctormate.co.jp/
 

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