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Long-term care Efforts Vol.21

介護の取り組み

こだわりの多床室で人気の豊恩荘は
職員も魅力に感じる職場

社会福祉法人 繁永会 特別養護老人ホーム 豊恩荘

香川県観音寺市にある『特別養護老人ホーム豊恩荘』では
”安心・安全・安楽な生活を送っていただく為に必要な補助を行う”という方針の下、施設サービス計画に基づいたサービスを提供されています。ハード面では「多床室にこだわった施設づくり」として利用者さんが快適に過ごせるような空間がベースとなっています。ソフト面では職員さんが働きやすくなる施策も数多く整備されています。
今回は、利用者さんのことを最大限考え、さらに職員さんも働きやすい施設『豊恩荘』の環境づくりについて、またキャリアアップの施策について、園田理事長に伺いました。
 

『「半個室」のような多床室』で誰もが快適に過ごせる施設へ

昨今、高齢者施設の「ユニット化」を国や都道府県が推奨していますが、ユニット型の施設は利用者さんの経済負担が増加することもあり、豊恩荘では多床室にこだわってきました。「完全個室」は利用者さんからすると”コミュニケーションが取りづらい”面があり、施設側からは”ケアの負担が増加し管理が難しい”という面があると考えています。
そこで香川県(豊恩荘の所在地)に相談し、4人部屋をパーテーションと「アコーディオンドア」を用いてプライベートな空間を確保し「半個室」のような多床室をつくりました。
大部屋と金額も変わらないこともあり、利用者さんご家族のご希望とも一致しているようで、見学に訪れた方々にも好評でした。運用を開始し現在まで、この空間で利用者さん同士のトラブルはほぼない状況です。空間が広がったことで、利用者さんも職員もストレスが軽減され、気持ちにゆとりを持てたという印象があります。
その他、古い施設での課題点についても建物のリニューアル時に改善を試みました。お風呂やトイレを広くするなど職員がストレス無くケアできるつくりや、照明を点けなくても自然光で明るさをキープできるような施設を実現しました。利用者さん・職員の快適さを考えた施設のおかげでしょうか、現在も満床状態をキープしています。


 

ソフトな面で考えた「職員が快適に働ける環境づくり」

私が豊恩荘に着任した35年前は「週休2日制」という考え方はありませんでした。「残業」も当たり前のように存在し、ベテランが帰らなければ若手は帰れないという古い体質でした。世間では週休2日制の導入が叫ばれ始めたばかりで、介護の仕事に就く人の数が今よりも非常に少ない時代のことです。
「何かを変えないといけない。働く人たちを守りたい」との思いから、「週休2日制」「残業ゼロ」の実現へ向け、改革をはじめました。

まず取り組んだのは”業務の整理”。その内容は
・「1人1日8時間」をベースとして勤務時間を設定
・1日の中で勤務している人数や行なっている業務を洗い出す
・今で言う「タイムスタディ調査」を実施

いわゆる「タイムスタディ調査」とは、一つひとつの業務時間を計測・標準化し、日々の業務に入れ込んでその日の出勤者で割り振る方法で、そうして模索しながら作り上げたものが「業務日課表」です。表にある作業を一人ひとりが完全遂行する形で業務を進めていきました。その際のルールは「平等」。経験年数は関係なく全員が行う業務は平等としました。

この進め方に対して、最初は反感を買うこともありました。「時間でわたしたちを管理するのか!?」と言われたこともあります。ただ、みんなを平等に扱うためには、時間でしか管理できなかったのです。営業職のように成果が数値で上がってくるわけでもありません。職員さんの理解を求めて「休日が増える」「残業もなくなる」というメリットを提示していきました。

こうして「週休2日」「残業ゼロ」を実現。この取り組みを始めて約30年、今でも「働く人たちを守りたい」という考えは揺らいでおりません。


 

やる気のある人にチャンスを

2020年からは「キャリアアップ制度」を導入し、若い人にもチャンスを与えるようにしました。過去に年功序列の弊害も数多く見てきましたので、経験年数が全てではなく、やる気ある人たちの力が発揮できる機会をつくっていくことは必然だと思っています。もちろん、若い人に限らず経験を積んだベテランも、向上心のある人は昇進できるようにしています。

それまでは主に私のトップダウンで物事を決めてきましたが、働くみんなに”責任感”と”広い視野”を持ってもらいたいと願い、流れを変えるべきだと思いました。そこで、各部署のリーダーで構成する「幹部会」を新設。改善が必要な事項について月に2回、話し合う場を設けました。
また、資格取得を推奨し、キャリアアップに必要な資格を取得すると昇給する仕組みもつくりました。そして、やる気ある職員には若くてもフロアマネージャーという役職を与え、フロアの意見をまとめて幹部会で進言し、協議できるようにもしました。

やる気のある人にはどんどん任せて、やらせてみることが大切です。現状を変える仕組みをつくり、自分たちが参加し、自主的に変えていく。主体性を持った人たちが増える組織にしたいと思い、取り組んでいます。
 

ICTが働き方改革を支えている

これまで紹介してきた「週休2日」「残業ゼロ」「キャリアアップ」といった施策は、ただやる気を煽るだけでは前に進めることも継続していくことも困難です。そこでICTの導入によって働き方をフォローしていくことが重要になります。
このような「新しい事を導入する」取り組みは、時期を逃すと前に進まないことが多々あります。豊恩荘では、ちょうど建物をリニューアルしたタイミングでしたので、気分も一新された機会にICTの導入を進めることにしました。前に進む際には、躊躇せず一気に押し進めることも大切です。

『ケアカルテ』との出会いもこの時でした。
記録にかかる時間の削減を狙い、介護記録の入力にケアカルテを採用してペーパーレス化も推進しました。「介護の見える化」を具現化するためにどのような手法があるか追求し進めましたが、職員が特に抵抗もなく受け入れてくれたおかげで導入もスムーズにできたのだと思います。
また「ICT推進室」を設け、配置した入社2年目の女性が中心となって活躍してくれたことも、次世代の力を感じました。若い人たちが取り組めばベテランも刺激を受け参加する、という前向きなサイクルができていたように思います。


 

紙おむつの管理で業務効率化・コスト削減

おむつのコスト対策にも取り組みました。
以前、布おむつから紙おむつ使用へと運用を切り替える際、何も考えずどんどん紙おむつを使うと費用が青天井となってしまう懸念があり業者に1ヶ月のコストを算段してもらったところ、50床で30万との試算になりました。そこで、利用者さんの紙おむつ使用の実態に照らし合わせ、適切な使用量を管理することにしました。「何時には、この組み合わせで使う」「どのタイミングで排尿漏れがあったのか」「どの部位が漏れていたか」などを全て記録入力し、毎日チェックしました。
ケアカルテ導入時にはカスタマイズを行い、紙おむつの管理ができる機能を実装してもらいました。これにより、手入力で行なってきた時間や工数も削減、利用者さんの使用量やコストの管理がスムーズにできるようになったのです。
結果的に月23万までコストダウンを実現。適切な排泄のタイミングの計測も可能となり、利用者さんのおむつの交換回数を1日6回→4回に減らすことにもつながりました。また、必要な量だけ無駄なく使用できたことから、その分紙おむつを質の良いものへと変更し、利用者さんの快適さにも貢献できています。

無茶な依頼もあったと思いますが、柔軟な姿勢で受け入れ要望に応えてくれたケアコネクトジャパンさんには感謝しています。ケアカルテのカスタマイズで実現できた仕組みによって業務が省力化し、「楽になった」と現場の職員からも声が上がっているほどです。

実際に、紙おむつをはじめとしたICT推進の結果、年間でかなりのコストを圧縮することができました。圧縮した分はきちんと職員に還元しています。そのようなことを事前に伝え「良いことへつながっていくので協力してほしい」と説明しながら、新しい取り組みを行なっています。原資は決まっています。少しでも待遇を良くしたいと願うからこそ、さまざまな工夫で適切な使用量を割り出し、切り詰めなくてはならないのです。
そして、職員が納得して実践することも重要です。そういった想いを理解してもらい、コストの意識は職員に浸透しつつあると感じています。
 

働く職員が魅力を感じられる施設へ

豊恩荘では「新たに職員の募集をしている」と話すと、現職員からの紹介で採用につながることがあります。これは、自分が働いている施設に魅力を感じているからこそ、求職者の方にも積極的に紹介してくれるのではないかと、とてもうれしく感じます。
これまでさまざまな改革を行い職員もレベルアップしてくれましたが、職員の年齢的なギャップが大きく感性が違うところは課題のひとつです。どうしても上席の職員や管理者からの意見を押し付けがちになってしまう場面も生じます。今後、若手職員に役職を任せるなどの策を進め、世代別の感性を取り入れながら運営を進める試みが大事だと考えています。
若い力、やる気のある人材に、これからも期待しています。

お話を聞いた施設

社会福祉法人 繁永会 特別養護老人ホーム 豊恩荘
サービス 特別養護老人ホーム(定員:50名、ショート8名)
住所 〒768-0069 香川県観音寺市茂木町4丁目6番2号
電話番号 0875-25-6369

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