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Long-term care Efforts

介護の取り組み

130名以上の外国人介護人材が活躍!
ICTが支える即戦力化のための育成とは

医療・介護・健康・福祉のウェルグループ

奈良・大阪・京都にて医療・介護事業を運営しているウェルグループ。
グループを挙げて、人材育成に取り組んでおり、自社はもとより他の事業所にも幅広く育成、活躍支援を行なっています。また、業界のICT推進に寄与するため(一社)全国メディケア事業協議会を立ち上げるなど、さまざまな工夫で医療や介護業界における人材の質の底上げを担っています。特に近年では、ベトナム・中国・インドに介護人材を育成するトレーニングセンターを設立し、アジアと日本の架け橋として歩みを進めている同社。今回は介護人材育成に関する取り組みについて詳しく伺いました。
 


 

―海外人材の教育や、現在実施している事業について教えてください。

ウェルグループでは関西で約45の介護施設・障がい者施設を運営しており、900名ほどの職員が勤務しています。複数の施設を運営するうえでは、安定した量・質の人材をいかに確保できるかが大きな課題となってきます。そのような課題に挑むため、約10年前に立ち上げたのが「海外人材事業」です。この事業は、優秀な海外人材を見出すこと、育てることを柱にしています。
 

優秀な外国人介護人材を「見出す」

「見出す」事業として行なっているのは、来日前からの現地トレーニングです。
海外でのトレーニングには現地機関との連携が欠かせません。そこでウェルグループが中心となり「全国メディケア事業協議会」を発足させました。現地の大学や病院、教育機関にパートナーとして加入いただき、一丸となって人材の育成に取り組んでいます。

現在は中国、ベトナム、インドにトレーニングセンターを構え、日本語や介護の知識はもちろん、日本文化やホスピタリティについてのカリキュラムも実施しています。
特に注力しているのは、リハビリができる人材を見出すことです。介護業界では近年、リハビリの重要性が高まっています。なぜなら、これまでのように「お世話をする」介護ではなく、利用者さんが持つ力を引き出す「自立支援」が求められるようになってきたからです。しかし海外には、リハビリの重要性に対する理解が進んでいないところもあり、ベトナムでは国家課題になっています。そういった状況を受け、今年度はJICA(国際協力機構)の委託を受けて、リハビリができる人材をベトナムで育成する事業も進めています。
 

優秀な外国人介護人材を「育てる」

「育てる」流れとしては、来日後に初任者研修・実務者研修、そして最終的には介護福祉士の取得を目指していただくことが一般的です。介護福祉士を取得できれば日本に滞在するためのビザが就労ビザへと切り替わり、日本で長期的に働けるようになります。そのため家族を持つ海外人材の中には、介護福祉士になることを目標とされている方も多くいます。
介護福祉士となるためには、まず日本語学校に通い、さらにその後専門学校に通う必要が出てきますが、このルートでいくと正社員として現場で活躍できるようになるまでにトータル3、4年かかってしまいます。
もちろん長い時間をかけてでも、活躍してくれる人材を育てるのは意義のあることです。一方で、介護の現場では即戦力も必要とされています。
そのため、技能実習生と特定技能の方をサポートする事業も進めています。


 

―資格を取るのは、日本人であっても難しいことだと聞いています。
海外人材の資格取得に向けて、どのようなサポートをしていらっしゃるのでしょうか。

まずは受験へのモチベーションを高めることが重要です。
私たちは、資格を取得できればお給料が上がること、日本で働き続けられること、そういったメリットをていねいに説明するよう努めています。
また、資格取得のための勉強に関しては、外国人の方を対象とした講座を開催しているほか、Eラーニングで学べる環境も用意しています。やはり資格の勉強をするうえでは言語の壁が大きいため、学習用のテキスト等にふりがなをふったり、Eラーニングでは母国語で勉強ができるようにしたり、といった工夫をしています。
 

―海外人材教育を進めるなかでのご苦労や、ケアが必要と感じることはありますか。

教育面では、やはり日本語の習得がネックとなります。
介護の現場では記録を取ることも多いです。しかも「こういった理由でこのようなケアを実施しました」というように、エビデンスに基づいた詳細な記録が必要になります。日本人にとっても難しいのですから、日本語を学びたての方が記録を詳細に書くのは簡単なことではありません。
さらに、働いてくださる方のメンタルケアも重要です。文化や生活習慣の違いによって感じるささいな違和感も、日々積み重なれば大きなストレスになります。望まない離職を防ぐためにも、まずは心の状態に気づいてあげることが大切です。

そこでウェルグループでは「楽ちんサポート」というシステムを開発・導入しています。
このシステムは、管理者側の報告業務の手間を減らすだけではなく、労働者のケアも重視しています。具体的には、その日の気持ちを顔のマークで分かりやすく入力できる画面があり、上司や管理組合の方にひとりひとりの心の状態を把握してもらえます。人材のサポートを、ICTにより公平かつ的確にやっていると出身国側にも伝えることは、安心して来日してもらえる材料になっていると思います。


 

―ICTに関するお話が出てきましたが、介護の取り組みにおいてケアカルテはどのように役立っていますか。

ケアカルテで記録を取ることが、介護の全体像を知ることにツナがっている点が特にありがたいです。
ただこなすだけの介護にならず、記録を取ることで自然と”意味のある介護”が実践できるようになっているのは、ケアカルテならではの効果だと思います。
食事や排泄などの記録を取るだけで見やすい表やグラフになるところも、助かっています。
 

週刊ケアカルテの記事をお読みの方におすすめ!

 

―海外人材育成について、業界として対策が必要だと感じていることはありますか。

いま一番恐れていることは人材不足です。新型コロナウイルスの流行により減らさざるを得なかった雇用の分は、今後も間違いなく足りなくなるでしょう。そして、景気が戻って外食や宿泊業といった人気の業種も求人を再開すれば、介護業界は人材の確保がますます困難になると危惧しています。
本来介護は安定した職業ですし、国家資格を取得すれば日本に長期間住むことができるという大きなメリットもあります。しかしそこがうまくPRできていません。今後は業界全体で、介護職の魅力を発信していかなければならないと考えています。

お話を聞いた施設

医療・介護・健康・福祉のウェルグループ
サイトURL http://www.wellgroup.jp/

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