Vol. IKAsu IKAsu Vol. TUNAgu TUNAgu

Long-term care Efforts

介護の取り組み

「長く働き続けたい」会社をつくる
定着率を上げる研修・支援のあり方とは

株式会社 スマイル

本社を構える神奈川県を中心に、東京都や静岡県の計29箇所でデイサービスや居宅介護支援、グループホームなどの介護事業を展開する「株式会社スマイル」。新卒社員の3年以内離職率の高さが課題であるところ、10%にまで下げる目標を掲げ、独自の教育体系をつくり上げています。
今回お話を伺ったのは、同社の社員教育を牽引してきた武内恭介さん。介護現場から福祉専門学校へ転職して教員を経験したあと、同社の人事担当として教育に携わってきた方です。そんな武内さんに、社員の定着率を上げるための取り組みについて伺います。


 

―武内さんは介護の現場だけではなく福祉専門学校の教員のご経験もあると伺いました。
どのような経緯で現在の職に就かれたのでしょうか。

介護教員になったきっかけは、高校卒業後に入学した専門学校で尊敬できる先生に出会ったことです。その方は私の担任であり介護福祉士でもあったのですが、とにかくカッコイイ先生でした。私自身、もともと人に何かを教えるのが好きだったこともあり、この先生のようになりたい!と思ったのです。
在学中から「介護の教員になるためにはどうしたらいいですか?」と先生に度々質問し、専門学校を卒業する時には「数年後には教員になって戻ってきます。採用枠を空けておいてください!」と宣言したくらい、自分の天職だと感じていました。卒業後は介護福祉士として特別養護老人ホームに勤務し、7年間現場を経験しました。その後”介護の教員”として働くための資格を取得し、宣言通り、介護教員として母校に戻ったのです。株式会社スマイルの方から「ぜひ当社でも人材の教育をしてほしい」と声をかけてもらったのは、介護教員として働きはじめて3年が経った頃でした。
 

―介護の会社で介護教員の経験者が研修を担っているというのは、かなり希少なケースだと伺いました。ここがスマイルさんの教育の「強み」だともお聞きしています。現在は人材研修を全面的に担当されているそうですが、具体的にどのような取り組みをしていらっしゃいますか。

まず経緯についてお話しすると、採用した新卒社員のうち平均して30%が3年以内に離職することが課題でした。なぜ定着率が低いのか、その理由として挙がってきたのは「介護職はキャリアビジョンを描きにくい」ということ。キャリアビジョンとは、5年後、10年後に自分がこうなっていたい!と思う”将来像”です。つまり、介護においても「こうなりたい」と思える将来像をつくっていくことが社員の定着率向上に繋がるのではないかと考え、キャリアデザインを含めた人材・教育全般の見直しをはかることになりました。
弊社の人材教育改革の柱は3つ。1つ目は新入社員研修を見直すこと、2つ目はメンター制度の質を向上させること、3つ目はICT導入によって若い世代の活躍機会を増やすことです。この3つの柱に加えて、新たな取り組みとして「キャリアコース」という採用制度を創設しました。これは「なりたい自分」を目指せるように考えられた独自の仕組みです。


 

―人材教育改革の柱について、ひとつずつ詳しく伺います。まず新入社員研修について、どのような工夫をされていますか。

初回の新人研修で伝えようとしているのは「これは授業じゃないよ」ということです。授業の目標は教科書の内容を学び、定期テストや国家資格試験をクリアすることかと思いますが、研修で学ぶ内容はお客様に対して即座に実践するもの。また自分でお金を払って受ける授業とは違い、研修は会社がお金を払ってくれて実施しているものです。このように、研修に対する心構えをつくるところからスタートしています。
研修する側にもそのような心構えが必要と考えていて、一方通行で聞くだけにならないよう「アクティブラーニング」を意識した研修の実施に努めています。
たとえば、認知症には4つの種類がありますが、それをただ伝えるのではなく「日本で一番多い認知症はどれだと思いますか?」と問いかけ、調べてもらう。グループワークも多く取り入れているため、研修がメンバー同士の交流の場にもなっています。私は採用面接も担当しているので、新入社員一人ひとりがどのようなキャラクターであるかを把握しています。それを上手く研修にも反映させるように心がけています。
 

―次に、メンター制度の質の向上についても教えてください。

メンター制度は、新人と比較的年齢の近い先輩が伴走する形で育成を行う制度です。私が入社する前からスマイルにはこの制度自体はあったのですが、具体的な方法など制度の深い部分までは整備されていませんでした。現在は、ケアの標準化を目指すために統一された育成フローを導入しています。
また、教育する先輩側に対しても面談スキルを向上させたり、新入社員を理解するための研修を実施しています。たとえば「次に来てくれる人(新入社員)たちは、コロナ禍ど真ん中の学生時代を過ごしてきたんだよね」など、新たに入社する社員の背景にあることを共有し、メンターとなる準備をしています。
 

―3つ目の柱「ICT導入によって若い世代の活躍機会を増やすこと」についても教えてください。

そうですね。若い方、特に“Z世代”と呼ばれている方々はICTの操作方法などを覚えるのが本当に早いです。現場で使っていた介護ソフトを新しいものに入れ替えた時も、若い世代のほうが早く使い方など理解しましたし、先日立ち寄った事業所では責任者よりもスムーズに「ハナスト」を使いこなしていて驚きました。
中年層のスタッフにはICTに対して少し身構えてしまう雰囲気がありますし、「ハナスト」のように音声で記録を入力するシステムは慣れるまでちょっと恥ずかしいという声も耳にします。若い方に即戦力となっていただくためにも、ICTの存在は欠かせないものになっています。

 
当記事に関連するセミナー情報はこちら


 

―「キャリアコース採用」という制度についても、教えていただけますか。

「キャリアコース採用」は、採用時(エントリーの際)に3つのコースから自分のなりたいキャリアを選び、将来のビジョンを作り上げていくことができる制度です。現在はスペシャリストコース・マネジメントコース・キャリアサポートコースという3つのコースを用意しています。スペシャリストコースは介護のスペシャリストを目指すコース。マネジメントコースは管理者や事業所の責任者、またはその上のマネージャーなどを目指すコースです。最後のキャリアサポートコースは、人事や総務、経理といった現場をサポートする部署で将来働きたい人に向けた受け皿です。
3つのコースに共通しているのは、1年目に介護の仕事を経験していただくこと。どのコースでも介護の現場を知った上で、2年目以降にコースに合わせた勉強をしていく形になります。介護職として入社しても、実は総務のような仕事のほうが合っているのでは…ということもありますから、1年ごとに期間を設けるなど定期的に自分のキャリアビジョンを見直す仕組みも作っていくつもりです。
また、介護の仕事では腰など身体を壊してしまう方もいらっしゃいます。そのような時に「退職」という選択肢だけではなく、私たちのようにバックオフィスで働くといったさまざまな働き方を可能にする枠組みをつくり、社員の離職率低下など明確な数値として効果が表れることを期待しています。目標は、離職率を平均30%から10%台にまで下げること。まだまだ始まったばかりの制度ですが、数年後に胸を張って結果をご報告できるよう頑張ります。

お話を聞いた施設

株式会社 スマイル
サービス 居宅介護支援、訪問入浴サービス、訪問介護サービス、デイサービス、認知症対応型デイサービス、グループホーム、介護付有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅、小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護
住所 〒238-0004 
神奈川県横須賀市小川町14-1 ニッセイ横須賀センタービル 6F
電話番号 045-312-0600
サイトURL https://smile-kaigo.net/

『月刊ケアカルテ』へのご意見、ご感想をお寄せください

無料セミナー申込受付中