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Long-term care Efforts

介護の取り組み

残業時間50%削減を目指して
介護ロボットの賢い活用方法とは

社会福祉法人 正和会 特別養護老人ホーム 成華園

茨城県日立市にある成華園は、太平洋を望むことができる自然豊かな特別養護老人ホーム。ICTやテクノロジーの活用により記録業務といった間接的なことだけでなく、利用者さまをケアする「直接介護」の場面でも業務改善を達成したとのことです。
今回は、同園施設課・介護課長の岸田卓也さんに、テクノロジー活用のポイントやこれからの展望について伺いました。


 

―「直接介護」の場面で、見守りセンサーや介護ロボットを活用されていると伺いました。それぞれの機器を導入した経緯や導入後に得られた効果をお聞かせください。まずは見守りセンサーについて教えていただけますか?

見守りセンサーを導入した目的は3つありました。
1つ目は夜間の安否確認を適切にするためです。特養には基礎疾患がある利用者さまがいらして在宅に比べ夜間急変のリスクも高いので、睡眠状況を常にモニタリングできる機器があれば、そういった急変にも早期に対応できます。
2つ目の目的は、睡眠状況を把握し日中の活動増加につなげることです。夜間巡回でお一人おひとりの様子を確認すると「目を閉じているからよく眠れているな」と思ってしまいがちですが、実はきちんと眠れていないことも多いのです。そういった状況でも見守りセンサーがあれば、睡眠状況は一目瞭然。日中の活動量を適切に決めることができます。
3つ目は、夜間巡回業務の改善です。成華園には80名様分の部屋があり、それぞれの巡回は必要かつ重要な業務ですが、介護職員の精神的・肉体的負担にもなっていました。センサーがあれば無駄な巡回を減らしながら適切なケアを行うことができると考えました。
 

―実際に見守りセンサーを導入されてみて、介護の仕方や対応に変化はありましたか?

センサーのおかげで「根拠」に基づいたケアを実践できるようになりました。たとえば平均睡眠時間のデータです。お一人おひとりの平均睡眠時間を確認して、臥床を促すタイミングを変えることで、ご本人の睡眠リズムに合ったケアができています。また、精神科の病院に通われている利用者さまについては、データを基にお薬の量を調整していただくことも可能になりました。不要な薬を減らすことができた事例もあり、効果を実感しています。


 

―介護職員の負担を減らしながら、効果を実現できている点が素晴らしいですね。
次は介護ロボット(リフト)の活用について伺います。導入のきっかけを教えてください。

これまで、下肢筋力が低下した利用者さまは職員による「2人介助」でトイレに誘導していました。トイレ誘導以外で日常的に立位訓練を行う場面がないにもかかわらず、唯一の訓練となるトイレでさえも自らの足で立つという行為にならないと、下肢筋力は低下する一方です。その結果、2人介助が必要な誘導者が増え、職員の負担もさらに大きくなってしまうといった負のスパイラルに陥っていきました。
そんな折、併設している通所施設で使用していた「アルジョ:サラフレックス」という介護ロボットを借りる機会がありました。実際に使用させてもらうと職員が1人でも利用者さまを支えることができ、とても使い勝手が良かったことから本格的に導入が決まりました。
 

―導入したことで、状況に変化はありましたか?

トイレ誘導を中心とした生活リハビリが充実し、排泄ケア全体の質が向上しました。その変化は数値にも現れ、2人介助が必要なトイレ誘導者は5名→0名になり、排泄介助にかかっていた時間を従来比で62%削減することができました。寝たきりだった方が自分の足で立てるほどに改善した事例も出てきて、改めて日々の小さな取り組みが重要だと実感しています。
 

―お話によると介護ロボットは、介助の補助器具としてだけではなくリハビリもできる器具だという印象を受けます。介護職員の方たちの反応はいかがでしたか?

これは今回の機器導入に限った話ではないのですが…介護に携わっている方々は素直で真面目な方が多く、「職員の負担が減りますよ」と職員側のメリットだけをアナウンスしても、新しい取り組みがなかなか浸透しないんです。ところが、利用者さまの生活の質が向上するというメリットにはとても関心を示してくれるので、そのような面も併せてきちんと伝えていくことが大事だと思っています。
 

―介護職員の負担を減らすことで利用者さまにしわ寄せがいってしまうのではなく、負担を減らしながら利用者さまにも良い効果が出るなら、職員も良いイメージが持てそうですね。利用者さまの反応はいかがでしたか?

介護ロボットを使った介助を拒否される方がいると耳にしたことはありますが、成華園では今のところ、みなさん前向きに受け入れてくださっていますね。例えば、在宅の一人暮らしでずっとオムツを着けていた方がいたのですが、お尻の皮が剥けてしまってとてもつらそうだったんです。そこで入所後に「少し恥ずかしいかもしれないけど、こういう機械を使ってトイレで排泄できるようになると、お尻の痛みも無くなるよ」とお話しました。すると、とても意欲的になり、トイレだけでなく他の場面でも「色々なことをやってみたい」と言ってくれるようになりました。
 

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―介護ロボットの使い方だけでなく、職員の声かけも功を奏したのですね。見守りセンサーや介護ロボットの活用によって、施設全体ではどのような変化がありましたか?
また今後の展望があれば教えてください。

一番大きかったのは残業時間の削減です。
前年度(令和4年度)はトータルで年間1900時間の残業があり、中でも管理職3名の残業が年間700時間と大きな割合を占めていました。この時間をどう減らすか考えたとき、見守りセンサーや介護ロボット、その他のICT導入によって削減できた時間を活用しよう、という話になりました。そこで管理職の仕事を現場の主任・副主任に割り振ったり、委員会活動やカンファレンスを昼間に行うようにしました。取り組みの成果もあり、前年度4月は残業時間が160時間だったのに対し、今年度4月は100時間ほど減っています。
そして、今年度はフロア間での情報共有や職種間での申し送りを改善するために新たな機器を導入して、残業時間を昨年度の半分、もっといえば1/3にまで削減できたらと思っています。

お話を聞いた施設

社会福祉法人 正和会 特別養護老人ホーム 成華園
サービス 特別養護老人ホーム、短期入所生活介護、通所介護、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、成華園福祉学院
住所 〒319-1222 茨城県日立市久慈町4丁目19番21号
電話番号 0294-54-2385
サイトURL http://seikaen-seiwakai.com/

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