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Vietnam

ケアカルテベトナム

訪日前の技能実習生に聞いたリアルな声-実習生の期待と日本に求められること-

Hoang Minh社 様/SAIGON INTERGCO 様

『ベトナムの介護事情』をテーマに紹介するこちらのシリーズ。
第1部「ベトナムの若者が抱く「介護観」とは」につづき、第2部の当記事では「介護職種の技能実習制度」に着目します。
この制度にはさまざまなメリットがある一方、”介護サービス”があまり浸透していないベトナムでは、送り出し機関の学生が介護業界の事実を知り得ずに送り出され、自らが想像していた実習先の様子にギャップを感じてしまうといった問題が起きています。

ベトナムはこれらの問題にどう向き合い、解決方法を編み出しているのでしょうか。
今回はホーチミンの日本語学校「Hoang Minh社」と、介護を含む送り出し機関を運営している「SAIGON INTERGCO」に日本に抱くイメージや問題解決につとめる取り組みを取材しました。

 

日本を訪れるまでの暮らし

はじめに、日本語学校の「Hoang Minh社」を訪問。
学校には来日が決まった方が入学し、2022年8⽉時点で222名(10〜30代)が在籍しています。この学校では送り出し機関の役割もしていますが、現在は介護部門の送り出しをしていないそうです。

担当の先⽣による施設案内のもと、学⽣たちが⽣活する様子を見せてもらいました。
学校は全寮制で、約半年間を過ごす部屋はいくつもの二段ベッドがある相部屋。個⼈のスペースになる各⾃のベッドには、お気に⼊りのぬいぐるみや寝具が置いてあり、⾃分らしい空間づくりがされています。中には、壁に⽇本の⾵景写真を飾る学⽣もいました。
 
 

日本語学校の学生が想像する”日本のイメージ”

実習先でのギャップが問題視されていますが、実習生と同世代であるHoang Minh社の学生は日本に対してどのようなイメージを持っているのでしょうか。
 
 
Q.日本のイメージを教えてください。

  • 富士山が綺麗。
  • 漫画、アニメで見る日本はとても綺麗。
  • 日本の働き方が好き。
  • 時間を守り、整理整頓が行き届いている。
  • 仕事に熱心で協調性がある。
  • 日本人は優しい。
  • 発展していると思う。
  • 新幹線が便利で、丈夫!
  • 漫画、アニメが有名。(特にコナン、ドラえもん など)

 
Q.日本に来る際、不安なことはありますか?

  • 特にありません!
  • うきうき、わくわくしています!
  • パッキング(荷造り)に悩んでいます。
  • 日本に行く日を楽しみにしています!
  • 慣れていないので、文化的に大丈夫かな…。
  • 日本語は面白いけれど、漢字がとても難しい。

 
日本語学校の学生たちは日本に対して明るいイメージを持っており、マイナスな意見はほとんどありませんでした。憧れや希望を持ち続けてもらうためには、訪日後も学生たちにギャップを感じさせないような工夫も必要だと考えられます。
受け入れ側の日本でももちろんできることはあると思いますが、ベトナムの送り出し機関「SAIGON INTERGCO」では介護業界の実態を伝えて、問題視されているギャップを解消するために動き始めているそうです。実際の取り組みを知るために「SAIGON INTERGCO」を訪ねました。

 

介護部門の学習から送り出しまでをサポート

「SAIGON INTERGCO」は、介護部門の学習も可能な送り出し機関(2018年8月取得)で、出国までの6~10か月間をサポート。こちらでもHoang Minh社同様に日本のことを学生に伝えています。
「介護技能実習制度」の課題や問題を念頭に置いて、SAIGON INTERGCOの職員にインタビューしました。


 

Q.介護分野における技能実習制度について、どのようなことが問題だと感じていますか?

介護現場の苦労を知らずに日本の明るいイメージだけを持って訪日すると、大きなギャップが生まれることが問題だと考えています。その原因の一つには、ベトナムの送り出し機関が実習先や介護業界の事実を伝えていないことも含まれていると思われます。
だからこそ、SAIGON INTERGCOでは対策をしています。たとえば、おむつ介助や⼊浴介助など具体的な仕事内容を説明するときは、実習⽣と実習⽣の両親に介助の映像を⾒せて”介護のイメージ”を鮮明にしてもらいます。そして、働く意義を必ず伝えることで大変でもやりがいのある尊い仕事だということを話しています。
こうした対策を講じたことで、SAIGON INTERGCOでは介護分野を選択する学生が増えています。
 

ベトナムの送り出し機関では、すでに介護技能実習生が感じるギャップを埋める取り組みをしていることがわかりました。
また、SAIGON INTERGCOでは技能実習生が帰国後に修得した技術を活かせるように、日本式介護を取り入れた介護施設を作る計画をされているとのことです。
このような取り組みが実現することで、介護技能実習制度の本来の目的を果たすことができると思います。


 

インタビューを終えて…

送り出し機関にいる学⽣たちのひたむきな姿勢や想いには、胸を打つものがありました。
約半年間、訪日に期待を膨らませて朝から晩まで勉強し、やっとの思いで⽇本に来る実習⽣の皆さんが「⽇本に来てよかった。」「⽇本の介護現場で技能実習ができてよかった。」と思ってもらいたいと強く感じました。そして、これほどの想いを持った学生の方々を心から尊敬しました。
そういった学生たちを受け入れる日本でできることは、学生が想像する”日本の好印象”や期待を裏切らないためにもお互いの違いや考えを理解し、ギャップを埋める努力をすることではないかと考えます。

第3部では、ベトナムで日本式介護を取り入れ、”日本の入所施設”と似た介護を提供する介護施設「ビンソン教会」の取り組みをご紹介します。ぜひご覧ください。

Coverage, editing:CareConnectJapan Honma

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