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Case Study

ケアカルテ活用/運用事例

ケアカルテ×ハナスト
ユーザー同士の学びがここにある

社会福祉法人 さわら福祉会 特別養護老人ホーム マナハウス

福岡市西区にある『特別養護老人ホーム マナハウス』に、ケアカルテのユーザーである長崎市平成会の皆さま(3名)と宮崎市シルバーケア野崎の皆さま(6名)が集結。
マナハウスさまの「ケアカルテ」×AI音声入力アプリ「ハナスト」活用について、ヒントやノウハウを学びたいという平成会さまとシルバーケア野崎さまの思いをケアコネクトジャパンケアコネクター佐藤がつないで、学びの場が実現しました。

最初にマナハウスの小金丸施設長に施設のICT化についてお話しを伺いました。
 

医療に強い特養としてやっていくために・・・

説明をしている小金丸施設長

 

『マナハウス』ならではの取り組み

2004年10月に開設したマナハウスは『透析治療を受けながら、安心して過ごすことのできる場所を作ろう』という前理事長の思いを受けつぎ、福岡で一番の特養としてやっていくために「医療に強い特養」「誤嚥性肺炎になりにくい特養」「地域に根ざした特養」の3つの特色を活かし、さまざまな取り組みをしています。

そして、2022年4月から『夜勤帯に経管栄養・喀痰吸引を介護職員で行う』ことを開始しています。新卒職員を除いて、夜勤を行う介護職全員がライセンスを取得しました。

これまで看護職員が行なっていたことを介護職員が夜間に行なうことになるので、業務が増えて負担になりますが、ケアカルテと連携している見守りシステムなどの介護ロボットをうまく使い、時間を生み出すために複数の補助金を活用して介護ICT化を進めました。

導入しているケアカルテと連携した介護ICT機器・システム

 


 

AI音声入力アプリ「ハナスト」のことをもっと知りたい

続いて、今回の説明会に参加した
宮崎市にある医療法人弘潤会老人保健施設シルバーケア野崎さま、長崎市にある社会福祉法人平成会さまに、自身の施設の紹介や説明会に参加したきっかけをお伺いしました。

「ハナスト」を実際にどう使っているのか見てみたい!

宮崎市にある『医療法人 同潤会 老人保健施設 シルバーケア野崎』さま
多職種連携で在宅復帰を目指す利用者さまと家族を支援している老人保健施設で
ケアカルテにおいては、業務のノウハウやこだわりを反映した定期的なカスタマイズによって、業務効率化をはかるとともに、定期的な運用検討も行われています。

今回は「ハナスト」が実際にどう使われているか、職員の皆さんが導入時から取り組んでいることを見て・聴いて、自分たちの施設状況と照らし合わせたいです。
 

「ハナスト」をもっと使っていきたい!

長崎市にある『社会福祉法人 平成会』さま
住み慣れた地域で支援が必要な高齢者の自己実現に向けて、在宅訪問・通所サービス、グループホーム、短期入所、老健、地域密着型特養、ケアハウス、養護、多機能施設などのサービスを提供。ハナストや服薬管理など、ケアカルテと連携できるシステムやセンサーを活用しており、ネオスケア見守りシステムも導入を予定しています。
施設見学の受け入れと共に、弊社新入社員のためにオンライン施設見学対応(2021年)や新入社員研修で講義(2022年)も村山さまにお願いしてご協力いただいています。

多機能施設で「ハナスト」を運用中。
具体的に「どう運用しているか」「導入当初はどうだったか」を見て・聴いて、今後の運用に活かしていきたいと考えています。
 

ケアカルテ×ハナストの記録の仕方を「見て・聴いて・学ぶ」

ハナストの音声入力で、マナハウスさまがご利用中の「Bluetoothヘッドセット」について、小金丸施設長より解説がありました。

(小金丸施設長)
現場でハナストの音声入力を使うときは、耳をふさがないマイク付きの骨伝導ヘッドセットをつけて、iPhoneはポケットやポーチに入れています。両手がふさがっている状態でも記録ができますし、周囲の声や音もよくきこえます。

このヘッドセットは導入時に推奨されていたので選びましたが、何よりヘッドセットをつけて記録しながらテキパキと仕事をする姿と、当時放送されていた救急医療のテレビドラマで医師・看護師たちがヘッドセットをつけて颯爽とオペや治療に動き回る姿が重なって「カッコイイ!これイイ!!」と思ったことも選んだひとつの理由です。(残念ながら、そのドラマを観ていた職員さんが少なくてあまり反応はありませんでした…)

また、職員の様子を見ていると、排泄の時にハナストで記録していることが圧倒的に多い。排泄介助後のかたづけや手を洗っている時に話すだけで記録できますからね。

ヘッドセットをしているマナハウスの職員さん


 

「ヘイウィズ!」と呼びかけて「記録」のキーワードでAI音声入力がはじまるハナスト

マナハウス フロアリーダーの中山さんと神谷(こうや)さんにも加わっていただき、ハナストの記録について実演・説明をお願いしました。

■ハナストの記録
①ハナストで音声入力
②iPhone内に記録カードが作成される
③連携でケアカルテに入る

■ハナストの実演
【食事の記録】
最初は「ヘイ、ウィズ」、次に「記録」「○○さま 食事全量摂取」「送信」
利用者さんを判断して「食事 主食10、副食10」の記録カードが作成されます。

【排泄の記録】
排泄の場合は隠語で話します。
最初は「ヘイ、ウィズ」、次に「記録」「○○さま まる 2 しかく 3 様子:パット」「送信」
「排泄 尿普通量、便多量、様子:パット」の記録カードが作成されます。
まる (尿)  0:なし  1:少量 2:普通量 3:多量
しかく(便)  0:なし 0.5:付着 1:少量 2:普通量 3:多量
※「様子」には対応時の利用者さんの様子を話して記録できます。マナハウスさまではパットに排泄していたことも記録しています。

ハナストのアプリ画面を説明する中山さん(右端)とシルバーケア野崎の皆さま

 

その場で気づいたことをすぐに質問

ハナストで記録した内容をケアカルテに連携後、記録一覧を確認する中で質問が飛び交い、会話がはずみます。

Q:ハナストで記録している時は、主食・副食・水分の量だけを話していましたが、ケアカルテで確認した記録には介助レベルや食事場所も入っていましたね。
A:利用者ごとに「介助レベル」や「食事場所」をデフォルト記録に登録しておくと、話すことが少なくてすみます。食事場所は変更になることもありますが、変更になったこともその時・その場で話して記録すればいいし、介助レベルなどを事前登録していなかった場合も様
子へ記録するようにしています。

【デフォルト記録の例】
・食事 介助レベル、食事場所
・排泄 介助レベル、排泄方法
・入浴 介助レベル、入浴方法
※デフォルト記録は、利用者ごと記録タイトルにあらかじめ介助レベルや場所・方法などを登録します。
(基本情報>デフォルト記録画面)


 

Q:食事場所が変更になったことをハナストで記録した場合、ケアカルテの記録にも反映されますか。
A:”デフォルト記録”であらかじめ登録されている食事場所は変更されません。
ハナストで変更になることを記録すると、ケアカルテの”様子”に入力されます。食事場所の変更は”様子”を確認してから後で書き換える必要があります。

「排泄の記録も知りたい」というリクエストがあり、ハナストで実演してもらいました。

Q:排泄は「まる2」「しかく3」というんですね。
A:隠語で、まる(尿量)+数字(量)、しかく(便量)+数字(量)の組み合わせで話して
記録します。以前は便の量を結構細かく記録していましたが、これを機会にハナストの方にあわせることにしました。

Q:入力のルールみたいなものってありますか。
A:ルールというものではないですが、デフォルト記録はこれまでもケアカルテで使っていたので、全員に登録しておくとハナストで記録をとる時に話すことは「食事の量」だけになります。「何と何を話して記録をとるのか」「何を話さなくてよいのか」がありますけど、使いながら覚えて・慣れてしまえば大丈夫です。

ハナストを使っているフロアリーダーのお二人から具体的な説明を聴く中、「事前のデフォルト記録登録」「ハナストで記録をする時の話し方」「ハナストにあわせた記録の仕方」などの場面で大きくうなずいてメモをとり、近くの方と相談・確認しあっていました。

Q:ハナストにはインカム機能もあるんですよね。
A:はい、あります。「ヘイ、ウィズ」、次に「連絡」と話すと、連絡モードになって職員間の連絡やちょっとした申し送りにも便利です。連絡した内容は、iPhone に残っていますから後から確認できるのがいいですね。
この連絡機能に、グループごと連絡できるようになるとさらに使いかが広がるなと思っています。

※2022年12月のバージョンアップで、「グループ連絡機能」に対応しました。

質問しているシルバーケア野崎 吉田事務長(左)、答えているマナハウス中山さん(右)

 

ハナスト導入時の様子を知る

Q:新たに「ハナスト」を導入することに対して、反対や消極的な声はなかったですか。
A:新しいことに積極的ではない人はいますね。
(中山さん)
職員ごとに対応をわけています。新しいことに興味をもってくれる人やこの人ならやってくれそうだなという人に声をかけて、使い方を説明して積極的に使ってもらいます。
外国人のスタッフにも試しに話してみてもらったら「おぉーはいるやん!」となって、そこからハナストを使ってどんどん記録してますね。気づいたら、みんなで使うようになっていました。

(神谷さん)
サブリーダーと一緒に、興味を持ってくれそうな人を仲間に引き入れてハナストの記録を始めました。それ以外の人には「しゃべると入るとよー」と実際に記録できることをみてもらい、自分で使ってみてハナストの「ここが使いやすい」「ここはちょっとやりにくい」といったところも逐一口頭で伝えて進めていきました。

(小金丸施設長)
確かに、新しいことへの変化をイヤがることもありましたね。
介護ロボットの出現や介護ICT化によっていろいろなことが変わる業界の中で、自分たちが変わっていかないと大変になることになるから「このツールを入れていくよ」ということをみんなに伝え、導入していきました。

参加者の皆さまはこれらの話を聞いて、「そうなんだ」「なるほど」と大きなポイントに感じているようでした。

ハナスト導入時の話をする神谷さん(右端)

 

見守りシステムの説明で さらに広がっていく学び

見守りのセンサーの使い分け

Q:パラマウントベッドの「見守り支援システム」と「aams(アアムス)」の両方を使っているそうですが、どのように使い分けていますか。
A:(小金丸施設長)
どちらも夜間の睡眠データ(呼吸・心拍・離床など)を測定できますが、見守り支援システムは眠りの質がより細かくわかると感じています。利用者さんの状況に応じて、必要になるものを選ぶようにしてますね。
見守り支援システムを導入したきっかけは、当時看取り対象者が何名かいたことでした。対象者の眠りや呼吸の状態がわかりますから、夜勤職員の負担が少しでも軽減できればと思って入れましたね。
今後は、アアムスのカメラも導入する予定です。カメラが必要な方のところへつけようと思っています。

Q:カメラを導入するということですが、はっきりそのまま映りますよね。設置によるプライバシー保護についてはどのように考えていらっしゃいますか。
A:(小金丸施設長)
これから考えていくところです。プライバシーの保護については、それぞれの法人・事業所の考えにそって対応していく必要があると思っています。
今の段階ではアラート時のみカメラの映像を見ることができればよいのではと思っていますが、何かあった時には録画データから取り出して確認することになるでしょう。

Q:私たちの考えは何かあった時(転倒など)に、カメラの映像を使ってきちんと説明できればと考えているのですが、今はどのようにしていますか。
A:(中山さん)
現状は、利用者さんの状況や前後の職員の動作を含めてヒヤリ・ハットや記録に残しており、ご家族や多職種への説明時に使っています。
また、見守りセンサーの使用は、入所時に確認する事前情報にそって対応を行い必要かどうかを判断しています。使用する中でアラートが頻回に鳴るなど転倒リスクのありそうな場合は、PT(理学療法士)に歩行状態を相談して付き添うなど個別対応の流れをつくっています。

(小金丸施設長)
これからのことですが、カメラが設置されている利用者さんのお部屋で何かが起きた場合には、映像で状況を確認してご家族に説明できるかなと思っています。
そして、利用者さんに全くリスクがない人はいないですから、職員同士で検討したこれらの対応は思い切ってやるように言っています。

参加者の皆さまは、この場できいたことをメンバーと確認しあいながら、検討することとチェックしている様子でした。

さまざまな質問に回答する神谷さん(左)

 

新しい取り組みの中で成功体験を重ねていく

新たな取り組みが人材育成にもつながる

会話は途切れることなく弾んでいます。さまざまな取り組みもリーダー中心に進められている話を聴く中「どのように人を育ているのか」という点にも興味・関心の目が向けられました。

(小金丸施設長)
ハナストや見守りシステムなどを導入していく中で、まずはリーダーたちが前向きに使い始めて、興味がありそうな人を仲間に入れてうまく進めてくれています。
時間がかかっていることもありますが、見守っている中で使ってよかったと実感してくれる職員が増えていると感じています。

興味をもつところはひとによって違うので、興味をもってくれたことに取り組んでもらえるようにアプローチしていきます。「誰かこれ好きなひとおらんかね」とリーダーたちにきいて探します。興味もったことに対しては、楽しそうにやっていきますからね。

またリーダーをいつも上にたたせるだけではなく、リーダー以外にも新たなことを経験してもらい、成功体験をつくります。
・老施協、九社連で事例発表
・施設への取材、見学の対応     など

人の話をきく体験から始まり、人に伝えて・話すことがとてもよい経験になります。
うまくいかないこともありますが、成功体験を増やしていくことで次のリーダーとなる人材を育てることにつながっていきます。
ハナストや見守りシステムなどをうまく活用し、時間を生み出して利用者さんに対応していくことは、成功体験につながるよい機会だと思っています。

シルバーケア野崎の皆さん 実際の現場のことを考えながら議論中

 

介護人材になる学生を受け入れる

”介護の現場で働きたいと強く思う人”と一緒に働きたい

説明会の後半には採用に関する話にも及び、「職員が辞めてしまった場合には募集をかけてもらいますが、本当にうちの施設で働きたいと思ってくれる人と巡り合えない、中途採用はなかなか難しくて苦労している」という話がでました。
そこで、毎年新卒者を採用している小金丸施設長に学生のことや介護実習のことなどを伺いました。

『学生の介護実習は毎年継続!学校もICT化へ!』
福岡市内には介護福祉士養成校が6校があり、そのうち2校はICT化を積極的に進めています。ケアコネクトジャパンの山下さんも、その1校で講師として招かれてICT化の話をしてますよね。そんな環境で学んだ生徒が高齢者施設へ介護実習にいって、記録が手書きだったら就職はしないと思うんですよ。
さらに、市内のどの養成校も定員割れで外国人を受け入れているので、学生の半数程度は外国人。話すことはできても書くことが苦手な外国人の学生にとっては、モバイルやハナストで記録入力できることが働く場として選ぶ大きなポイントになるはずです。

マナハウスでは毎年行う介護実習でより多くの学生を受け入れており、今年度はすでに約50名の学生がきてくれています。学生の受け入れは、職員には負担になることもありますが、新卒採用へつながるひとつのチャンスだと思っています。また職員としても一緒に働くことを思い描きながら「この学生いいな」と思うところがあるようです。(中山さん、神谷さんもニッコリうなずいていました。)

介護ロボットや見守りセンサーを学んでいる学生に施設を選んでもらうためにもICT化は必要です。何度かの失敗を繰り返した中途採用はやめました。そして、介護の仕事を「本当にやりたい」と思っている人に働いてほしいと考えています。

本当に働きたいと思ってくれている人と一緒に働きたいという熱い思いがあることがひしひと感じられました。


 

実際に会って話すことでより充実した説明会に

「ハナストの使い方をくわしく知りたい」という声から生まれたこの学びの場に、参加された皆さんから感想や意見をいただきました。

・とてもよい機会をつくっていただきました。またこのような機会をつくってほしいです。
・「ハナスト」をどう使い始めたのか、どう取り組んでいるのかをていねいに教えていただき、たくさん質問もできてとても勉強になりました。
・実際に会って話せると質問もしやすく、話も広がってとても盛り上がりました。細かなことにも答えていただき、持ち帰って現場に活かしたいと思います。
・「ハナスト」だけでなく、見守りシステムや新たな取り組みにどう対応しているか、人材育成や新卒採用に関することなどいろいろお話を伺えて、とても参考になりました。
・コロナに負けずに、またこのような機会をつくりましょう!

参加している皆さまから自発的に質問や意見が出て盛り上がり、とても勉強になりました。
実際に会って、その場で意見交換できるって本当にイイですね。

特別養護老人ホームマナハウスさま、社会福祉法人平成会さま、シルバーケア野崎さま
本当にありがとうございました。

弊社ではユーザーの皆さま同士がつながる機会をこれからもつくっていきます。
 

ご参加いただいた皆さま

■社会福祉法人平成会の皆さま
2022年9月23日に開業した西九州新幹線 新幹線 かもめでいらっしゃたそうです。


 

■シルバーケア野崎の皆さま
宮崎市から車2台に分乗していらっしゃったそうです。長距離ドライブですね。

シルバーケア野崎さまの記事を2023年7月に配信しております。
あわせてご覧くださいませ。

ケアカルテ×ハナストユーザー同士の学びがここにある

お話を聞いた施設

社会福祉法人 さわら福祉会 特別養護老人ホーム マナハウス
サービス 特別養護老人ホーム(69名)/ショートステイ(11名)
住所 〒819-0032 福岡県福岡市西区戸切3-20-8
電話番号 092-811-5528
サイトURL http://www.sawara-fukushikai.org/manahouse/

Coverage, editing:CareConnectJapan Ogawa

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