外国人の介護人材を育てる
介護技能実習生の皆さんを積極的に受け入れている医療介護のウェルグループ 海外教育人材事業部 ジェネラルマネージャー杉田さまと介護老人保健施設ウェルケア悠の副施設長中井さまに、ケアコネクトジャパン ツナぐ課ケアコネクタ―梁がお話を伺いました。
外国人の方を受け入れるために
― 介護技能実習生の方を受け入れるきっかけを教えてください。
(杉田さん)
まずは、外国人の方を受け入れるところから始まりました。
介護業界全体にいえることですが、「人材不足」は最大の問題です。日本人に向けた介護に関する資格取得のための講座などは、長年やってきていましたが、介護への就労人口が減っていっているという状況でした。
でも、介護技能実習生をいきなり受け入れたというわけではないんです。
今から7年前ぐらいに、日本に暮らしている在日外国人の方で、「日本語がちょっと話せる方」と「日本語がほとんど話せない方」の両方の方を試験的に受け入れました。
日本語が話せない方が介護現場で実際どうなのかをまず確認しましたね。
▷介護現場で本当に働けるのか
▷ご利用者の反応は大丈夫なのか
▷一緒に働く現場の職員が受け入れできるかどうか
試験期間を経て上記の事柄について検討を重ね、日本語が話せない方であっても、受け入れられると現場側が判断して、法人として積極的に受け入れていこうと決めました。
まずは、日本語学校を大阪市内につくって、留学生の受け入れをはじめました。
日本語学校で受け入れ → 介護の専門学校へ行く → 介護福祉士の資格取得 → 介護ビザ取得
その第一号がインタビューを受けたクアンさんです。
留学生だけでは対象人数が少ないので、法人全体36事業所の必要人数を確保するために、協同組合をふたつ稼働させて、介護技能実習生の受け入れを開始しました。
▷2017年11月から介護技能実習生の受け入れが制度としてOKとなる
▷2019年1月から実際に現場で受け入れを開始して、今に至るという状況
仕事に対してまじめで、人との関わりを大切にする
-介護技能実習生を受け入れている施設でのエピソードやアピールしたいことはありますか。
(中井さん)
介護技能実習生はよく働きます。どの国の方も仕事に対してまじめです。
言われたことを学習していこうという意欲は、日本人にないものを外国人の方は持っています。それがある意味一緒に働く日本人にもよい影響を与えています。日本人の職員たちは、「あの子、すごいがんばっているな」「日本語上手になったな」など、介護技能実習生の様子から刺激をもらいながら一緒に働いています。
介護技能実習生の受け入れは、グループ全体で相当数になるんです。そこで、「寮長」「現場長」というリーダーとなるまとめ役をつくり、役割を与えることでさらに意欲的にやってもらえるようにしています。
また、初任者研修や実務者研修には、どんどん受講してもらい、勉強して資格をとってもらってます。介護福祉士を目指してもらえるように現場としても常にバックアップしています。
(杉田さん)
コロナの前までは、イベント・お祭りとかで、ベトナム料理を作ってもらってみんなで食べてましたね。
アオザイを着てくれたり、日本人職員にも着てもらったりして、利用者さんを囲んで写真を撮ったりもしました。
利用者さんも職員も身近で異文化に触れることができましたね。
(中井さん)
自分たちでつくった漬物をもってきてくれたり、まぁーすごいにおいがしたりもしますけど・・・(笑)私たちをよーくもてなしてくれます。ベトナムを知ってほしいという気持ちが強いですね。こちらからは、日本のおはぎをつくって、この時期には食べるものなんだよという話をしたり、夏の時期にはゆかたを着て楽しんでもらいます。関わりは深くもっていると思いますよ。
介護技能実習生たちの面倒をよくみている看護師長さんのことは、「お母さん」と呼んでいて、すごい慕ってます。さすがに私は、「お母さん」とは呼ばれていませんけどね。私は、「先生」と呼ばれています。
日本で生活するって、やっぱり大変~そこは丸っとサポート
-日本での生活は環境が大きくかわることになりますが、配慮していることを教えてください。
介護技能実習生は、年齢の若い子が多く、子供を置いてきている子もいます。寮のネット環境が悪いと家族と連絡を取れなくなってしまうので、すぐに業者の方に行ってもらって、対応するようにしています。
▷交流する機会
寮には、グループ内の他事業所の介護技能実習生がいるので、寂しくないように交流する場を用意しています。コロナ前は、定期的に実習生の交流会も行っていましたね。
寮に帰ると、他の施設で働く実習生にも会えるし、2ヶ月に1回、寮会議を行って困りごとを聞く機会をもってます。さみしくないように、人に早く慣れるようにいろいろ考えましたね。
▷現場では・・・
現場には、ベトナムや中国などの場所や文化・習慣などがわかる冊子をつくったり、あいさつができるように準備しましたが、介護技能実習生の子たちから、日本語でガンガン話しかけてくれるので、全然使うことはなかったです。心配したほどではなかったですね。
人材育成には
-人材育成として取り組んでいることを教えてください。
(中井さん)
会社ぐるみで仕組みをつくっていて、やったらやっただけの成果や教育がどこまで進んでいるのかがわかるようにしています。
独自に開発した「介護プロ」というキャリアパス制度は、介護技術や社会性などの能力をもとに8段階のレベルに分かれていて、現状も目標もわかりやすくなり、自分の能力が反映できるようになっています。
日本人も外国人も同じように、どこまでやったらどうなれるかを見える化しています。
勉強するためのアプリをスマートフォンにインストールして、「介護の勉強」も「日本語の勉強」もできるようになっていますね。自分が活用すれば、どんどん成果につながっていきます。
介護のモデルとなるものを一緒につくっていきたい
(杉田さん)
介護業界も介護事業も、今後、さらにむずかしくなっていくと思っています。
社会保障費を圧迫していることもありますし、2024年の介護報酬改定もどうなるかわからないし、加算がへるなど・・・たぶん、よくなることはないかなと思っています。
介護はなくならない業界ですし、ある意味やり方さえきちんとすれば安定もするし、収益も上がりやすいと考えています。プラスになるか、マイナスになってしまうかの分かれ目は「介護人材の安定」と「介護ICTへの取り組みをどうやっていくか」になると思っています。これらの取り組みを継続していくことで、成功することができる事業所になると信じてやっています。
同じように考える事業所の皆さまと、お互いに上手くいったこと、失敗したことなどを共有したいという思いがすごくあります。日本では衰退している産業もたくさんある中で、介護は伸びしろがある産業だと思うんですよ。伸びしろを増すためにも、外国人の人材活用とICT化がマストだと考えています。
よいモデルをいち早くつくっていきたいですし、さらには、東南アジアなどへ展開していきたいと思っています。
他の事業所さまとも、ぜひ、一緒にやっていきたいです。
YouTube『海外人材雇用』