「子どもからお年寄りまでの“地域の中の居場所”でありたい」という理事長の叔母様の思いからスタートした『社会福祉法人ひだまり』。認知症の方2人を預かることから始まり、現在は高齢者福祉・障がい者福祉と16の事業所を展開しています。利用者にとって『ひだまり』が、住み慣れた町で暮らし続けられる場所であるために、職員の働きやすさや離職防止、業務効率化にICTを活用。
理事長の永田かおりさんと現場の職員のお二人(ほっとひだまり管理者 三宅祐子さん、笑みの家ひだまり 副管理者 臼井志織さん)から、同社の介護の取り組みについて伺いました。
社会福祉法人ひだまりは、グループホームやデイサービス、特別養護老人ホーム、訪問看護、放課後等デイサービス、小規模多機能型・看護小規模多機能型のサービスなど複数展開し、子どもからお年寄りまでさまざまな方に利用されています。だからこそ、それぞれの事業所で使う機器や記録・請求との連動が望まれ、その希望を叶えたシステムがケアカルテでした。
高齢者と障がい者のどちらもいる家族などのケースも、ケアカルテなら横断的な管理が可能です。令和3年のシステム導入以来、現場の職員に操作方法は浸透し、ケアカルテはなくてはならない存在になりました。
(永田さん)
タブレットを使って現場で効率良く記録ができるのは、残業時間の削減にツナがっています。また学生さんの見学会や採用時には、ICT機器の活用についてアピールしています。例えば、業務効率化だけではなく、夜間の看取りの時などに安心できるメリットがあると伝えています。介護をしていると、どうしても亡くなる時に側にいられないことがあるんです。1時間前には異常はなかったのに次に行ったら呼吸をしていないと、職員は後悔の念に駆られたりも。そこに見守り機器があれば、呼吸が浅くなるとアラートを発生してくれるので、何度も見に行くことができますし、夜間帯の安心感にツナがります。
(三宅さん)
夜間でも見守り機器で心拍などがわかるので、しっかり寝ているなと把握したり、睡眠を邪魔することなく支援のタイミングを計ることができます。
外国人職員の働きやすさとタブレットの使い道
外国籍の介護従事者も増えている昨今ですが、同社で働く外国人スタッフにもケアカルテの記録システムが活用され、タブレットの使用は記録以外でもあらゆる場面に役立っているといいます。
現在、小規模多機能とデイサービスでは請求にケアカルテを利用、看護小規模多機能、生活介護、ショートステイ、居宅介護支援、放課後等デイは全て連携しています。特養とグループホームが連携していませんが、導入に向けて準備をしているそうです。
(臼井さん)
日本語を話すことはできても書くことはできなかったり、漢字やカタカナが使えなかったりと、これまでは利用者さんのご家族向けの記録を作成できなかった外国人スタッフもいました。しかし、ケアカルテを導入してからはタブレットで音声入力ができるので、書くことが難しくても記録がスムーズにできるようになりました。
また、手書きで記録する必要がないので、字が綺麗でもくせ字でも関係なく、記録が伝わりやすくなったと感じます。先日、スタッフと翻訳機能を試してみたのですが、母国語で話したものを翻訳して入力できる機能もあり、これが活用できたら、日本語が不得意な人も記録が十分にできるようになるかなと期待しています。
(永田さん)
スタッフがタブレットを使わない時間は、利用者さんが映像を見たり音楽を流したりと、別の使い方もしています。利用者さんのお部屋での過ごし方にも心地良さが増したように思います。
ケアカルテを導入した施設がスムーズに運用していることを見た他施設の職員からは、「私たちも切り替えたい」と要望があがっています。ICT以外に、たとえばお風呂のメーカーも揃えたりして、職員がどの拠点に異動や応援に行っても、使い勝手が同じになるように環境を整備しています。
家庭と仕事の両立を支援する柔軟な働き方
女性が多く、子育て中や子育て経験者が半数以上を占める同社。理事長自身も子育て経験者であり、家庭との両立支援のために柔軟に働ける環境を作っているとのこと。
人材確保の目線を常に持ちながら、制度の見直しや研修、見学やボランティアの受け入れ、SNSやホームページの更新など、一体的に取り組んでいるそうです。ただ、仕組みはあっても使いづらければ、働きやすさにはなりません。管理者をはじめ働く仲間が”お互い様”であると理解していることが、同社の働きやすさにツナがっています。
(永田さん)
法人の中に託児所があるので、そこに子どもを預けて働けるようにしています。小さい子どもを持つ職員からは「4時間しか働けないけれど、介護職できるかな…」と入職時に不安の声もありますが、現場で1年以内に介護職員初任者研修を受けてもらうなどして少しずつ自信をつけてもらい、子どもとの生活の中で勤務時間も少しずつ延ばしていけるよう支援しています。短時間で働く職員も大きな戦力です。
(臼井さん)
お子さんの体調により休まざるを得ないこともあります。その場合はしっかり休んでもらい、時には他の事業所から応援で人員を割いてもらうなどしています。入社半年に満たない方も前倒しで有給が取れるようにしてあり、欠勤とならず休みを調整することができます。
(永田さん)
チーム会議などは17時半頃に行うことが多く、早く帰宅するパート職員は参加しづらいことがありました。ただ、コロナ禍でオンライン会議のハードルが下がったこともあり、在宅勤務としてオンラインで参加できるように制度を変えました。おかげで情報共有がとてもスムーズになりました。オンラインや記録・請求のシステムを活用することによって、職員の気持ちにも余裕が生まれたと思います。