週刊ケアカルテ4号の『介護の取り組み』でご紹介したウェルケア悠さま。
前編の「介護技能実習生の受け入れ」に続き、5号では後編をお届けします。
今回の介護の取り組みは、留学生として来日したのちに職員となったベトナム人のダン ティ ゴック クアンさんが留学生活で経験したことや学んだこと、介護技能実習生との関わり、生活環境に寄り添った施設の取り組みについてお話を伺いました。ぜひ最後までご覧ください。
「日本の介護」を学んだきっかけは、偶然の重なり
ー 日本で介護を学びたい、介護業界で働きたいと思ったきっかけは何ですか?
もともと日本の企業で働きたくて、ベトナムの大学に通って日本語を勉強していましたが、大学3年生の時、日本に留学経験のある先生から「日本の介護」の話を聞いて当時のベトナムにはなかった「介護」を勉強したいと思ったことがきっかけです。
大学を卒業してから日本の介護や日本語を学ぶため、2017年10月に先生の紹介で「ウェル日本語学院」と「介護の専門学校」に留学生として入学して、日本に来てから2ヶ月後に「ウェルケア悠」でアルバイトを始めました。アルバイトの経験を活かし、現在は一般職員として働いています。
先生の話をきっかけに、介護が「縁」になって多くの人との繋がりを作ってくれました。
留学生として来日してから、いくつもの壁を乗り越え…
ー 来日してから苦労したこと、またはそれを乗り越えるためにどんなことをしましたか?
働き始めたばかりの頃は介護の専門用語など知らない言葉が多かったので、利用者さんや職員さんとコミュニケーションを取ることにとても苦労しました。
利用者さんの要望になかなか応えることができず、怒られてしまうこともありました。
さらに、私は日本語の中でも標準語を勉強したのですが、職場の皆さんは関西弁を話されるので慣れるまでは大変でした(笑)
介護については学校に通って学びましたが教科書に載っていることがすべてではなく、現場に行かなければわからないことも多かったです。
教科書を使って勉強することはもちろん大切ですが、現場で実践したり先輩・上司から直接話を聞くことが一番勉強になると思います。
私は現場で実践を重ね、教科書を使って復習していました。
ー コロナ禍で気をつけていることはありますか?
コロナが流行する前は週に1〜2回程度面会ができていたのですが、現在は制限されています。面会できない理由を「コロナ禍なので…」とは伝えにくいので、利用者さんの寂しさや不安な気持ちが落ち着くように声をかけたりしています。
そして、自分の体調管理にも充分に気をつけています。
知らないうちに自分が感染していて、高齢者にうつしてしまえば本当に大変なことになるからです。そのため予防を徹底的に行なっています。
ー 多くの苦労を乗り越えてきた中でも、うれしかったことはありますか?
日本人と実習生が、コミュニケーションをしっかり取って良い人間関係を作れたことです。職員さんや利用者さんが自分のことを覚えてくれたり、仕事から帰るときに笑顔で手を振ってくれるので、つらいことがあっても「1日頑張ってよかったな〜!」と思うことができます。私にとってのエネルギーです。
母国ではないところで仕事や生活をしている中、みんなから愛される存在になれたことが一番うれしいです!
ー 「日本の介護」の良いと思ったところはありますか?
他国の介護を勉強したことはありませんが、日本の介護はどの国よりもサービスが優れていると感じています。利用者さんひとりひとりのプライバシーを尊重して人の思いを大切にしていることや、何に対してもていねいに行なっているところが本当にいいと思いました。
法人の万全なサポート体制
ー ウェルケア悠ではいつから介護技能実習生の受け入れをしていますか? 何名ほど在籍していますか?
3年前から受け入れをしています。
日頃、サポートしている人数は6名ほど。ウェルケア悠に就職した実習生は10名程度います。実習生は2階と3階の2フロアに分かれて業務をしています。
ー 留学生のときに勉強とアルバイトはどのように両立していましたか?
ウェル日本語学院が大阪府、ウェルケア悠は奈良県にあり、住んでいたところからも近くではなかったので移動が大変でしたが、送迎してもらえたので迷うことはなかったです。とても助かりました。
また、勉強とアルバイトの両立が大変なので、アルバイトのシフトは勉強する時間を考慮しながら組んでいただきました。とても苦労しましたが、さらに日本語を勉強して「N1」を取得することができました。(N1:日本語能力試験の最難関レベル)
学んだ日本語は、ベトナム人実習生がわからない言葉を翻訳して伝えるなどいろいろな場面で活かすことができてやりがいを感じています。
自分の努力してきたことが職員さんから認められ、応援してもらえたこともとてもうれしかったです。
ー 実習生が安心して働くために、意識していることはありますか?
実習生には1日の業務を終えた後、その日の出来事をノートにまとめてもらい、同時に、会社が開発したWEBシステムに業務内容を報告してもらっています。
できたことや悩んでいることを書いてもらい、今日はどんな気持ちで仕事をしていたのか確認しています。困りごとがあればフォローや声かけを心がけています。
ー 皆さんに伝えたいメッセージや願いはありますか?
介護職はとてもやりがいのある仕事です。
でも、介護技能実習生や留学生の中には、何かのきっかけで介護の勉強や仕事がいやになってしまう人もいます。そんな実習生たちに「介護って大変なだけ」「覚えるには時間ばかりがかかる」などある一面だけが伝わって、それが外国の方に広まってしまうと、介護の良いイメージを持ってもらうことは難しくなります。
お願いしたいことは、日本人も外国人も協力して、現場で仕事をするのに大切な「何のために行うのか」や「時間をかける理由」などを教育やサポートを通してていねいに伝えてほしいし、実習生を見守ってほしいと思います。それらが、企業と働く日本人や外国人との信頼につながっていくと思っています。
そして、残念なことに介護職に就く実習生は特別多くはないですね。
皆さんが介護に必要な知識を身につけて、少しでも多くの人に介護の仕事そのものに興味を持ってもらい、介護業界で一緒に働くことができたらとてもうれしいです!
インタビューを終えて・・・
ウェルケア悠の職員になったクアンさんが留学当時からのエピソードをいきいきと笑顔で話してくださったのがとても印象的でした。その中で「資格をとって職員になる」という目標に向かってコツコツと努力している姿と、職員の皆さんや利用者さんの笑顔が活力になっていることが、話す様子やカメラ越しに感じられました。
介護技能実習生の皆さんにとって、見える化された人材育成の仕組みやサポート体制とともに、皆さんの笑顔が心強いものになっていると思います。
4号の前編でもウェルケア悠さんの取り組みをご紹介してます。ぜひご覧ください。