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Case Study

導入事例

帳票はケアカルテで一元管理
〜運用体制の統一で転記作業時間を削減〜

社会福祉法人 天竜厚生会

ケアカルテ 導入時期 2009年4月
システム構成 パソコン:145台
モバイル:105台

●ちょうじゅ(現ケアカルテ)導入までの運用体制

■A社システムを使用
平成12年の介護保険制度開始にあわせて、A社システムを導入しました。
ケアプラン作成システムも含まれていましたが、実質使用しておらず、請求システムのみを使用していました。

■給付・請求管理業務のみシステムを使用
介護保険が始まった当初は多忙で、給付・請求管理業務(国保連への請求や請求書・領収書の発行、入金管理、サービス提供票の作成など)だけしか使用できていませんでした。

落ち着きを取り戻した頃、システムを活用してケアプラン作成を試みましたが、当時は、事業所独自のアセスメント様式を使っていたため、システム内のパッケージのアセスメントシートの使用に当たって、職員には抵抗がありました。

また、OCR機能を使って、手書きしたアセスメントシートをシステムに読み込めるようになっていましたが、実際はエラーばかりで使い勝手が悪く、やがて使用しなくなってしまいました。
包括的自立 支援プログラムやMDS-HC方式、その事業所独自の様式など事業所によって異なるアセスメント様式を使うことになってしまいました。
 

●導入検討当時のお困りごとや課題

■記録作業の無駄
転記作業に費やす労力・時間が大きかったです。
メモに書いた記録を食事・排泄・入浴チェック表やケア日誌、申し送り等に転記し、さらにそこから健康チェック表等に転記していたりと、かなりの転記作業を行っていました。
月末には処遇記録をまとめ書きしていたので、残業することも多かったです。

■情報共有が困難
パソコンは事務所しか配備されておらず、また拠点ごとにサーバーが別であったため、情報共有のためにシステムを活用できていませんでした。
本来の目的である同じ拠点内での情報共有、離れた事業所間での情報共有を実現したかったです。

■各事業所で帳票がバラバラ
当時は、情報共有のためというよりは職員個人の記録管理のためにシステムを活用するという意識が強く、エクセルで作った帳票に入力したり、手書きであったりと、各事業所、あるいは職員個人ごとに運用がバラバラでした。
そのため、1年に一度の大きな人事異動の都度、覚え直しのロスが発生し、それがミスにつながることもありました。

■セキュリティの脆弱性
拠点ごとにサーバーを設置していたため、情報セキュリティ上でも問題がありました。
システム部門が各拠点にあるわけではないため、本部のシステム部門がサーバーの状況をスピーディーに把握することが困難でした。

■制度改正や介護報酬改訂時の費用
拠点ごとのサーバー管理であったため、システム更新時に費やす費用が高額でした。
メーカー担当者が十数拠点をまわり、バージョンアップ作業を行うため、かなりの日数がかかっていました。
 

●ちょうじゅ(現ケアカルテ)を知ったきっかけ

■システムフェア
ある施設長からの紹介で、平成19年6月21日にアクトシティ浜松で行なわれたシステムフェアに参加しました。
半信半疑の状態から、ちょうじゅ(現ケアカルテ)であれば問題解決できると、判断して本格的に検討し始めることになりました。

実際の画面周りを見ながら個別に相談させてもらいましたが、そこでの印象がよく、その後ちょうじゅ(現ケアカルテ)を使用している施設への見学にも行きました。

最初の印象は「動作が速い」「ケアプラン管理や指示出し機能を備えている」など評価は上々でした。
 

●他社サービスと比較検討や検討時の重要なポイント(期待する効果)

他社で販売しているタブレットやモバイルは、実際の業務で使えるのか、不安がありましたが、ケアコネクトジャパンのPDAは現場で使える印象を受けました。

平成21年にA社システムの保守契約が終了することをきっかけに、本部にある高齢者支援事業部が主導となり、ワーキンググループを結成し、検討を重ねました。

当初は数社の候補が挙がっていましたが、以下の6ポイントに絞って検討しました。
・健全経営、安定したシステム開発など、信用のおける企業である。
・操作指導、トラブル対策に力を入れている。(サポートデスクを開設している)
・統計・集計機能を備えており、データ分析が容易である。(データ出力でき、二次活用できる)
・請求に関する機能が完成されている。
・法人としては複数の介護保険事業を運営しており、それらを本部のサーバーで一元管理し、ネットワーク化できる。
・記録システムを備えている。

記録システムについては、当時、一般的にもまだ浸透しておらず、当法人としても「チェック表、ケア日誌、処遇記録、申し送り表等、転記している記録をシステムを活用し、各帳票に反映できれば便利である」という認識はありましたが、それ以外の具体的なイメージを思い描くことができませんでした。

そのため、当初、上記の検証ポイントには含まれていませんでしたが、検証を重ねるにつれ、次世代のケア展開のためにも、ここで導入しようという機運が高まりました。

■B社システムを導入しての検証
平成17年9月、静岡市にある登呂の家で、B社記録システムを導入して、検証することになりました。

登呂の家での運用の評価がよければ、法人全体で展開していく目的での導入でしたが、バージョンアップ・カスタマイズ時の対応やサポートの悪さなど、法人全体で運用していくには、課題が多いことがわかりました。
 

●導入を決定した理由

■最終的にはC社との一騎打ち
一次選考5社、二次選考3社、最終的には2社に絞られましたが、いろいろな観点からワーキンググループだけでは最終決定に至りませんでした。
現場職員もメンバーとして参加していましたが、導入後、新たにパソコンでの業務が発生することになるケアワーカーや看護師の意見が最も大切であるため、もっと広く意見を求めることになりました。
不安の解消や自分たちが選んだという認識を持ってもらうために、業者の説明を聞いてもらったり、実際に操作を体験してもらい、職員による投票を行いました。
全拠点の代表スタッフ100名以上が選考に関わり、各事業所持ち票1票ずつの投票を行いましたが、9:1の割合で富士データシステム(現:ケアコネクトジャパン)に軍配が上がりました。圧勝でした。

■カスタマイズができる
A社 、C社などのシステムを利用している施設を見学しましたが、システム内のパッケージの帳票は自分たちの業務に合わず使い勝手が悪かったり、職員の抵抗があったり、そもそも目的とする帳票がなかったりと、システム外で帳票を管理していることが多く、せっかくのシステムが活かされていないことがわかりました。
これではかえって業務が煩雑化する可能性があるため、帳票などカスタマイズできることが大きかったです。
これにより、システムに自分たちの業務を合わせるのではなく、自分たちの業務にシステムを合わせることができました。

■入力端末機器
C社の入力端末機器はバーコード入力であったり、B社はタブレットPCでした。これらは、違和感があったり、携帯に不便でした。
ちょうじゅ(現ケアカルテ)は当初から、PDAでタッチペンでの入力であったため、携帯に支障はなく、キーボード入力が不慣れな職員でも、ある程度は使いこなせるものでした。

■営業の方が介護保険を熟知している
介護保険のことを知らない人の場合、こちらが困っていたり、要望していたりすることを理解してもらうまで時間がかかってしまいます。
また、システムを活用して、よりよい体制を築いていくためには、業者の協力が必要不可欠であり、介護保険を熟知し、困りごとにも懇切丁寧に対応してくれる心強い味方が必要でした。
今まで使っていたA社であれば、過去のデータ資産を引き継ぐことが可能、職員への操作方法の教育が最小限で済むなどのメリット、C社であれば、全国での導入実績があり安心、大きい企業なのでサポート体制が期待できるなどのメリットがあり、逆にちょうじゅ(現ケアカルテ)は全国区ではなく、サポート体制も不安というデメリットがありました。
しかし、それらのデメリットをカバーすることができる上記のような大きなメリットがあったため、導入に踏み切ることができました。
 

●導入後の主な利用体制(業務の流れ)

・本部にある高齢者支援事業部で、全拠点のリアルタイムな情報把握に活用しています。
・朝夕の申し送りに必要な情報を印刷して活用しています。
・1日の利用者のケアの状況、心身の状況を把握するのに活用しています。
・利用者の記録だけでなく、施設内の事務連絡として活用しています。
・デイサービス職員が、ショートステイ利用中のケア記録を照会し、利用期間中の状態を把握していたりと、事業所間の情報共有に活用しています。


 

●利用するスタッフの評価

■PDA
PDAは持ち運びが容易であるため、利用者の方の近くで記録入力ができます。
台数に限りがあるため、食事の時は食堂で担当者が入力するなど、ケアの場面に合わせて現場で記録を入力しています。

■情報共有
以前は、他ユニットの記録がそのユニットに直接足を運ばないと見ることができませんでしたが、1台のパソコンの端末から閲覧できるようになりました。
また、法人内のパソコンがネットワーク化されたため、一人の利用者の情報が事業所間で共有しやすくなりました。

■グラフ等の視覚化情報
異常値の記録が色分けされて表示されたり、温度板等で利用者の方の体調変化がグラフ化されていて、変化が発見しやすくなりました。
排便がない時など、看護師がチェックして有効活用しています。
 

●施設全体としての効果

導入前に比べて、転記作業が大幅に減りました。

■業務手順の標準化、介護の均質化
帳票等を統一する過程で、業務の無駄や無理を見直すことができ、業務手順の標準化が図れました。
また、職員が異動になった際でも混乱が少なくなりました。 記録のレベルの統一だけではなく、介護の質を底上げすることにつながりました。

■チームワークの向上
法人内の事業所間の情報共有や連携が上手くいき、ご本人を中心にした多職種連携がより実現できるようになりました。
また、導入当初、ケアワーカーは皆が不安を抱えていましたが、職員同士が教えあったり、入力が遅い職員を手助けしたりと、よりチームとしての一体感が生まれました。

■ご家族とのつながりご家族とのつながり
特に、画像を取り込める機能を使って、利用者の方の笑顔や施設での生活の様子等を記録でき、それを活用して、わかりやすくご家族に提供できるようになりました。
また、検索機能を使って過去のデータが活用しやすくなったため、ご家族へ説明する際、わかりやすく根拠のある説明ができるようになりました。
 

●ちょうじゅ(現ケアカルテ)でご不満な点、改善してほしい点、現在の課題

■詳細な記録の入力
ちょうじゅ(現ケアカルテ)では、ある程度の選択項目があらかじめマスタ設定されており、それを選択するだけなので、文字入力の手間が省けて大変便利です。
しかし、それに頼りきってしまうと、今までの手書きのような詳細な記録ではなくなってしまう危険があります。
特に、ある出来事の記録がその利用者のケアのヒントになることが多くあるため、ちょうじゅ(現ケアカルテ)で合理化してできた時間をそれに充てていくことが必要であると考えています。
数値記録を集めることは非常に効率的に行えるようになりましたが、利用者がこんな言葉を発した、行動をしたなどの記録は、個々の職員のレベルに依存してしまっているのが課題です。

■記録のデータ化による落とし穴
記録類がデータ化され、バックアップがとられていれば、災害等により一時的に情報を失っても、インフラ(電力等)の復旧とともに再度データの活用が可能になりますが、逆を言えば、インフラが復旧する間、何の情報も取り出せなくなってしまう可能性もあります。
紙での出力(どの記録を、いつ出力し、いつまで保管しておくかなど)のルール化などの必要性を感じています。
 

●施設運営に関して弊社サービスの活用・検討されていること

■運用紹介
たくさんある機能を使いこなせていないため、今後、他法人の事業所での運用方法の紹介など、サポートしてもらいたいです。
特に現在、試用している24時間シートに関する情報提供をお願いしたいです。


 

●今後に期待すること、導入システム・サポート体制などへのご意見

当初、懸念していたサポート体制の不安が露呈した時期もありましたが、担当者を固定化してもらうことで解消できた面もあります。
しかし、質問の回答や依頼事項の対応が遅いことがまだ見られるため、より迅速化を図っていただきたいです。

また、今後はちょうじゅ(現ケアカルテ)を使った処遇の向上、職員業務の効率化など、運用面での積極的なアドバイスをお願いしたいです。
モバイルは有効な入力ツールとして活用していますが、記録の二重入力のチェック機能を搭載していただきたいです。

お話を聞いた施設

社会福祉法人 天竜厚生会
サービス 特別養護老人ホーム、短期入所生活、通所介護、老人保健施設、短期入所療養介護、通所リハビリテーション、訪問介護、訪問入浴、訪問看護、居宅介護支援、地域包括支援センター
住所 〒431-3492 静岡県浜松市天竜区渡ヶ島217-3
サイトURL http://www.tenryu-kohseikai.or.jp/

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